「女性の過労死」(8)華やかさの裏側で
竹信 三恵子
たけのぶ みえこ 朝日新聞社学芸部次長、編集委員兼論説委員などを経て和光大学名誉教授、ジャーナリスト。著書に「ルポ雇用劣化不況」(岩波新書 日本労働ペンクラブ賞)など多数。2009年貧困ジャーナリズム大賞受賞。
女性の過労死は、仕事の華やかなイメージと労働実態との落差が土壌になっている場合が目立つ。大手航空会社の客室乗務員(CA)の過労死は、その一例だ。
2019年1月、ロサンゼルスからの国際帰国便で、6日連続勤務だった50代のCAの女性が、頭痛などの体調不良を訴えて意識を失い、目的地の羽田空港に到着後に死亡した。
フライト中の労働時間が要件に満たないことなどをもって労災不支給とされ、再審査を請求したが、却下された。だが、遺族や支援団体からは、意識を失って20分以上たって医師呼び出しのアナウンスが行われるなど、対応の遅れがなおも疑問視されている。
NPO法人「航空の安全・いのち人権を守る会」の酒井三枝子理事は、女性が99%を占める日本のCA職場で、「女性の仕事」への軽視と「お客様第一」の会社の方針が背景にあったのではないかと疑問を投げかける。
先進各国では、CAの女性比率はおおむね6割程度だ。乗客の生命を守る「保安要員」として国による資格制度もある。だが日本のCAは「厚生労働省編職業分類表」で「接客・給仕の職業」に分類されるなど、専門職としての位置づけが弱い。事件当時も機内は乗客への食事提供に追われ、それが救急救命対応を後回しにさせた可能性があるという。
女性は、労組で待遇改善へ向けて活動したことがあり、昇格の大幅な遅れやハラスメント、孤立に悩んでいた。それが扱いの差を生んだ、とも疑われている。
「華やかさ」で多数の応募者を集め、「代わりはいくらでもいる」という状況をつくって使い捨てる。女性の職場にしばしば「見受けるそんな労務管理も、女性の過労死の土壌となる。