斎藤貴男「レジスタンスのすすめ」


 

       

     米国だけが正義という歪みここにも

 

 


 さいとう・たかお 新聞・雑誌記者を経てフリージャーナリスト。近刊「『マスゴミ』って言うな!」(新日本出版、2023年)、「増補 空疎な小皇帝 『石原慎太郎』という問題」(岩波現代文庫、2023年)。「マスコミ9条の会」呼びかけ人。


  

 プロ野球ヤクルトスワローズとDeNAベイスターズの試合で、球審の川上拓斗審判員(30)が、打者のスイングしたバットに左後頭部を直撃され、緊急手術を受けた。4月16日、東京・神宮球場での異常事態だった。

 スイングの主はスワローズのホセ・オスナ選手(33)。豪快なフォロースルー(インパクト後のバットコントロール)で知られる強打者だが、この時はバットが後方にすっぽ抜けた形だ。

 4月末現在、川上氏の意識は戻っていないままだという。日本野球機構(NPB)は、「本件をきわめて重大な事案として受け止め」、「(審判員らの)防護措置のあり方について検討」するとコメント。とはいえ、それだけで済まされてよい話だろうか。

 オスナはこの間も、中日ドラゴンズの石伊雄太捕手の頭にバットを直撃させている。かつて同様のプレースタイルで、1年に2人の相手捕手を病院送りにしたこともあるW・バレンティンが、やはりスワローズの選手だった。

 プロなら危険は覚悟の上、ではあるにせよ、それは野球の本質から外れていない場合だ。過剰なフォロースルーが禁止されていないのは確かでも、おのずと限度がある。せめて被害者の回復が確認されるまでは出場停止とか、抑止効果の伴う処分や規制があって然るべきだろう。

 近年の日本の野球はアメリカ野球の猿マネばかりだ。投手を打席に立たせない「指名打者」制度や、投球間隔に時間制限を設ける「ピッチドロック」等々、野球の根源的魅力を損ないかねない新ルールが次々に、「メジャーがそうだから」という理由で当り前になりつつある。と同時に、ただ危険なだけのパフォーマンスは放置され続けているのも、「メジャーがそうだから」であるらしい。

 野球界だけの問題ではない。アメリカだけが〃正義〃だという価値観の歪みに、いいかげん気づくべきである。