「プロスポーツ選手は労働者」というILOの認定は世界に(日本にも)広がるか?


       

        玉木 正之

 

たまき・まさゆき スポーツ文化評論家,日本福祉大学客員教授。著書に『スポーツとは何か』(講談社現代新書)など多数。近刊は「真夏の甲子園はいらない 問題だらけの高校野球」(編・著、岩波ブックレット、2023年)    


 

 今年はミラノ・コルティナ冬季五輪とWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)が終わると、6月からサッカーのW杯と国際大会が目白押し。だが、次の事実を御存知か?

 2020 年、ILO(国連の国際労働機関)は「スポーツ界におけるディーセントワーク(働き甲斐のある人間的な仕事)グローバル対話フォーラム」という委員会を設け、「プロスポーツ選手は労働者である」と認定。プロスポーツ選手の団結権や団体交渉権を認めた。さらに22年にILOは、世界中のプロスポーツ選手の権利を守る「グローバル労働協約」を提案した。

 しかし、この組織と制度は上手く機能していない。それはFIFA(国際サッカー連盟)やIOC(国際オリンピック委員会)が、自分たちはレギュレーター(管理者・運営者)であり、プロ選手を使って利益を得ている使用者ではないと主張しているからだ。

 FIFAの主張はW杯やクラブW杯を主催し、世界中からプロサッカー選手を集めて試合をさせ、多額の利益を得ている実態とは懸け離れた主張と言える。またIOCも世界中からプロスポーツ選手を集めてオリンピックを開催し、スイスに〃IOC御殿〃と呼ばれるほど豪華なビルを持つほどの利益を得ている。

 なのにFIFAもIOCも「国のために闘う大会(国別対抗試合)」という〃権威〃と〃意義〃でプロ選手を競技させているのは、「やり甲斐労働搾取」だと主張する声もある。

 「日の丸を背負って」というスローガンに対して反旗を翻すのは難しいかもしれない。が、プロスポーツ選手という労働者として、大会の過密スケジュールの改善や、賞金だけでなく出場料の獲得など、今後〃使用者〃に対して改善を主張する「物言うアスリート」が多く出てくるかも……。