許すな「定額働かせ放題」
日本労働弁護団が集会
長く働いても一定時間働いたとみなす「裁量労働制」の適用拡大が政治課題に急浮上しています。長時間労働が「自己責任」とされ、過労死・過労自死が増える「定額働かせ放題」の制度だとして、日本労働弁護団が4月16日、阻止を訴える集会を都内で開きました。労働団体だけでなく、学識者や過労死遺族が適用を拡大しないよう訴えました。
見えない長時間労働が増加
過労死防止学会元代表幹事の黒田兼一明治大学名誉教授(人事労務管理)は、厚生労働省が2019年に実施した裁量労働制についての大規模調査を基に行われた、労働経済学者(川口大司東京大学公共政策大学院教授ら)の研究成果を紹介しました。
研究では(1)目標や締め切り(2)業務内容や業務量(3)業務遂行や時間配分(4)作業開始と終了時間――の決定方法などを測定しました。その結果、仕事の裁量が低い労働者に裁量労働制が適用された場合、労働時間が増え、健康状態や仕事への満足度が減少するという傾向が示されたのです。論文は「裁量が低い労働者への適用は、長時間労働や健康への悪影響を招く可能性があるため、慎重な対応が求められる」と示唆しているといいます。
黒田教授は「こうした貴重な実証研究の成果を十分に生かさないまま、裁量労働制拡大ありきの政策を進めるのは極めて遺憾(いかん)であり、危機的だ」と警鐘を鳴らしました。
脳・心臓疾患の労災申請件数は高止まりし、精神疾患の申請は年々増え、年間4千件近くに上ります。裁量労働制適用者については労災認定件数だけで申請件数は公表されていません。
この状況のまま裁量労働制の適用を拡大するとどうなるか。同教授は「日本の労働時間が、見えない形でさらに長くなるのではないかと心配している。過労死・過労自死の犠牲者はさらに増え、交通事故の死亡者と同じぐらいになってしまうのではないか。恐ろしいことだ」と危機感をあらわにしました。
そして、次のように述べました。「国際的に重視される(国連の)『ビジネスと人権』の原則が問われなければならない。あえていえば、過労死は企業による殺人行為だ。この是正に国は取り組まなければならないのに、逆行しようとしている。裁量労働制の拡大はやめるべきだ」
過労死が自己責任に
電機メーカーでエンジニアとして働いていた夫を過労死で亡くした渡辺しのぶさんは、「(夫の死後、)会社の上司から『ご主人は裁量労働制適用だったので過労死ではありません』と言われた。会社のために、自分の時間や子どもと過ごす時間を犠牲にして働いていたのに。裁量労働といっても、残業しても終わらないほどの仕事を与えられ、同僚たちは皆、終電の時刻まで働いていた。だれ一人自分でスケジュールできる状態ではなかった」と話します。
裁量労働制は、例えば12時間働いても、8時間働いたとみなす制度なので、会社が把握せず、本人も記録していないと労災認定は困難を極めます。
渡辺さんが携わる「過労死家族の会」には、就職したばかりのわが子を過労死で亡くした親からの相談が増えているといいます。長時間労働のうえハラスメントで追い込まれた末の悲劇です。知識も経験もない若者たちが裁量労働制の適用を打診されれば「嫌とはいえない」。そう述べたうえで、「私のような遺族をこれ以上増やさないためにも(裁量制の拡大阻止へ)皆さんのお力を借りたい」。
路線の違い超え決意誓う
労働弁護団の集会では、連合、全労連、全労協の代表が一堂に会し、裁量労働制の拡大阻止へ「ここにいる皆様と協力しながら連合を挙げて運動していく」(菅村裕子連合労働法制局長)などと決意を誓い合いました。