守屋 真実 「みんなで歌おうよ」

                     


 もりや・まみ ドイツ在住27年。ドイツ語教師、障がい児指導員、広島被ばく2世。父は元千代田火災勤務の守屋和郎氏 

                   


  声が枯れてしまった。
  このところ一日おきくらいに集会に出て長時間歌い、喉を休める暇がないからだ。2月から国会周辺で戦争やスパイ防止法に反対する集会が毎日のように行われ、そのたびに参加者が増え続けている。その他にも全国各地で同様のデモや集会が広がっている。時代が熱くなってきた。もう面白くて仕方ないから「ちょっと喉を休めなきゃ…」と思いつつ、つい力いっぱい歌ってしまうのだ。
 4月19日の総がかり行動には、主催者発表で3万6千人が参加した。私はもっと多かったのではないかと思う。国会前庭内にもかなりの人がいた。池のほとりでピクニックのようにおにぎりを食べている人も、その横には「平和がいいね!」のプラカードが置いてある。エレガントなワンピースにピンヒールを履いた子ども連れの女性がいて、「この人も?」と思ったら、女の子は「NO WAR!」と書かれたTシャツを着ていた。大正時代の女学生のように胸高に矢絣の袴をはいた若い女性、頭を花輪で飾った女の子、ラッパのような機械でシャボン玉を噴き上げながら歩く若いカップル。みんな思い思いに工夫を凝らした服装やプラカードを身に着けており、見ていて飽きない。やはり若い世代がたくさん参加すると華やかで活気がある。アナログ人間の私でも、インターネットやSNSの力は凄いと思う。
 一方で、若い世代と言っても2015年に活躍したシールズの学生たちと今日の若者とは質的に違うとも感じる。シールズの若者たちは、市民的不服従を実践して機動隊の規制を決壊させる原動力になってくれたけれど、今の若い人たちは警官の指図におとなしく従っている。意味なく横断歩道の前で止められて(むこう側は空いているのに)も、「3列に並んでお待ちください」と言われれば、本当にきちんと3列に並んでおとなしく待っている。「危ないから石垣の上に乗らないでください」と言われれば、「すみません」と言ってすぐに降りる。この十年で、若者がより一層臆病なお利口さんになったのだろうか。檻の中の抵抗しか知らないのだなと思うけれど、それでも、おとなしい若者たちが行動し始めたことをまずは評価したい。
 自民党の門寛子衆議院議員が最近のデモを「ごっこ遊び」と評したけれど、戦争ごっこをしたがる政治家よりもよっぽどまともだ。資源もエネルギーも食料も輸入に頼っているこの国が戦争に巻き込まれたらどうなるか、ホルムズ海峡を封鎖されてもまだわからないのか。憲法9条があるから自衛隊の派遣を望むトランプに応じなくて済んだのではないか。岡倉天心は、「もしわれわれが文明国になるためには、血なまぐさい戦争の名誉によらなければならないとするならば、いつまでも野蛮国に甘んじよう。(茶の本)」と書いた。焼け野原やがれきの山や放射能汚染地帯になるよりは、お花畑の方がずっといい。
 集会の後、父も眠る青山霊園の解放運動無名戦士の墓を訪れた。爽やかな若葉の下、先人たちに「力を貸してください」とお願いしてきた。きっと願いは届くと思う。
 声は枯れても心は枯れないぞ!