雨宮処凛の「世直し随想」

 

 

      

      人権をめぐる前進と後退

 

 

 あまみや かりん 作家・活動家。フリーターなどを経て2000年,自伝的エッセイ『生き地獄天国』(太田出版/ちくま文庫)でデビュー。『生きさせろ! 難民化する若者たち』(07年,太田出版/ちくま文庫)で日本ジャーナリスト会議賞受賞。


  

 2026年は、「人権三法から10年」ということをご存知だろうか。

 人権三法とは、障害者差別解消法、ヘイトスピーチ解消法、部落差別解消推進法。

 10年前に三つの法律が施行された時のことは覚えている。特にヘイトスピーチ解消法は話題となった。理念法であるなど課題は残ったものの、これを機に、この国の人権課題は大きく前進すると思っていた。それがどうだろう。残念ながらこの10年で、大きく後退しているではないか。特に昨年夏以降の後退がすさまじい。突如として「外国人たたき」が始まり、排外主義の嵐が吹き荒れている。

 それだけではない。第2次トランプ政権は排外的な姿勢をむき出しにし、移民取り締まりに前のめりだ。

 調査機関ピュー・リサーチセンターによると、米国の移民数は25年1月から半年だけで100万人以上も減ったという。トランプ政権下で流入が減り、強制送還が増えたためだ。また、移民捜査官によって、市民が射殺されている。

 そんな今年は、相模原障害者施設殺傷事件から10年という年でもある。この10年、障害者を巡るあれこれも決して前進したとは言えないが、忘れたくないのは、障害がある国会議員が増えたこと。

 19年、ALSの舩後靖彦議員、重度障害がある木村英子議員が当選し、22年には医療ミスによる障害を負う天畠大輔議員も誕生した。決して楽観できることばかりではないけれど、積み上げられてきたものもたくさんある。そんなことを確認しつつ、事件から10年という時をかみ締めたい。