夏の競技の一部を冬の大会へ。それで夏の五輪肥大化は止まるか?


       

        玉木 正之

 

たまき・まさゆき スポーツ文化評論家,日本福祉大学客員教授。著書に『スポーツとは何か』(講談社現代新書)など多数。近刊は「真夏の甲子園はいらない 問題だらけの高校野球」(編・著、岩波ブックレット、2023年)    


 

 2月4日、IOC(国際オリンピック委員会)が、夏季五輪の競技の一部を、冬季五輪に移すと発表した。

 夏季五輪は2028年ロサンゼルス大会が36競技351種目に選手・関係者2万人以上が参加予定。一方、冬季はミラノ・コルティナ大会が16競技116種目で公式参加者は5千人程度。そこで夏の競技の一部を冬に移せば、夏季五輪の肥大化を防げると、IOCは主張する。

 このアイデアは、かつてIOC副会長を務めた猪谷千春氏が、約25年前に既に唱えていた。が、「狙い」は違った。彼はバスケットボールやバレーボールなど屋内競技を冬季五輪に移せば、夏季大会の〃空きスペース〃に、新たな競技を加えることができる、という意見だった。

 「オリンピックは単なるショーではなく、世界平和構築のための人類の祭典で、できるだけ多くのスポーツを加えて、多くの人々の関心が向くようにするべきです。だから五輪競技にしてほしいというスポーツを、排除し続けるわけにはいかないでしょう」

 猪谷氏(現在はIOC名誉委員)の主張は、確かに「オリンピックの正論」と言える。が、今回のIOCの目的は、(公式には)肥大化しすぎた夏季五輪の縮小だという。

 しかし、五輪競技への正式採用を望む競技は、過去に特別採用された野球・ソフトボールやラクロス、サーフィン、空手の他、インラインスケート、フライングディスク、パルクール、eスポーツ、ドローン競技など目白押しだ。

 かつての猪谷氏の主張は「冬季競技は氷と雪の上の競技」(IOC憲章)との理由で否定された。が、今回は憲章の改定も伴うという。

 冬季五輪に移される夏の競技は6月に発表されるが、夏季五輪が縮小するのか、五輪全体が夏と冬でさらに拡大するのか? 注目される。