斎藤貴男「レジスタンスのすすめ」


 

       

     行き過ぎた「毒親」ブーム

 

 


 さいとう・たかお 新聞・雑誌記者を経てフリージャーナリスト。近刊「『マスゴミ』って言うな!」(新日本出版、2023年)、「増補 空疎な小皇帝 『石原慎太郎』という問題」(岩波現代文庫、2023年)。「マスコミ9条の会」呼びかけ人。


  

 家族の多様化が進む。社会や経済の変化に伴い、夫婦と子どもの核家族が減少し続ける一方で、単身世帯やひとり親世帯の増加が目立つ。事実婚、同性カップルの世帯も珍しくなくなった。

 封建的な〃家制度〃との対比で、好意的に論じられがちな奔流は、だが平凡で普通と言われた親子関係の崩壊と軌を一にしてもいるらしい。たとえば――。

 「毒親」という用語をご存じだろうか。「子どもの人生を支配し、害悪を及ぼす親」を指すという。虐待や性暴力も含まれるが、大概は思い通りに生きられていない成人が、その原因を幼少時に受けた過干渉や暴言や叱責等々に求めようとする場合に使われる。

 日本で広まったきっかけは、1999年に出版された『毒になる親』。(スーザン・フォワード著。原書は〃Toxic Parents〃、1989年)。この考え方がじわじわ浸透し、やがて「母が重い」論の流行などによっても拡大解釈されていく。『日経DUAL』誌が2017年に公開したアンケート調査では、236人の回答者(女性215人、男性21人)のうち72・4%が、「両親が毒親だった」と感じたことがあるという。

 昨今はさらに定着し、当たり前の言葉になった。要はよほど子どもに甘くて都合のよい親でない限り、みんな毒親にされてしまう。精神科医やセラピスト、報道機関等々も、悩める人々が状況の責任を転嫁でき、楽な気分になれるのならばと、安易に「毒親」を乱発している構図。少子高齢化の時代、後々の老々介護を恐れて、親と早めに絶縁しておきたい心理も働いているのではないか。

 本当にひどい親も、それで救われる人々も少なくないのだろう。だとしても、現在の「毒親」ブームは行き過ぎだ。人が家族に縛られない社会を目指すことと、他人の家族をよってたかってぶち壊すこととは違うと思う。