雨宮処凛の「世直し随想」

 

 

      

      ヘイトへの歯止め欠く日本

 

 

 あまみや かりん 作家・活動家。フリーターなどを経て2000年,自伝的エッセイ『生き地獄天国』(太田出版/ちくま文庫)でデビュー。『生きさせろ! 難民化する若者たち』(07年,太田出版/ちくま文庫)で日本ジャーナリスト会議賞受賞。


  

 「クルド人は川口から出ていってください」「外国人を追い出さなければ治安は守れません」

 2月1日投開票の川口市長選で、ある候補者はこう口にした。この人物は落選したものの、選挙でのヘイトスピーチが看過できないものになっている。

 そのような状況を受け、1月26日、衆議院第二議員会館にて「衆議院選挙にあたり排外主義の煽動に反対する緊急共同に関する声明記者会見」が開催され、参加した。

 登壇した弁護士であり「外国人人権法連絡会」の師岡康子氏は、昨年夏以降、起きていることを話してくれた。「これまで貸してくれていたのに住居や駐車場を貸してくれなくなった、クレジット契約の更新を断られた、クラスメートから『日本人ファースト』と言われたなど、日常的な差別も悪化しています」

 急激に変化した日本社会の空気が、静かに暮らしていた外国人の生活に暗い影を落としているのだ。「多くの国では少なくとも人種差別の扇動は違法であったり犯罪であったりして、最低限の歯止めはあります。ヨーロッパでも、特にネット上のヘイトスピーチについてはどんどん規制が進んでいます」(師岡氏)

 しかし、日本には肝心の「歯止め」がない。

 デマやヘイトが飛び交い、「バズったもん勝ち」「閲覧数がすべて」という無法地帯となった選挙で、法や制度はあまりにも周回遅れだ。

 ヘイトは社会を壊す。差別は許さないと、さらに声を上げる必要があることを痛感したのだった。