非正規公務員の評価
(1)破壊的な作用の陳列棚
竹信 三恵子
たけのぶ みえこ 朝日新聞社学芸部次長、編集委員兼論説委員などを経て和光大学名誉教授、ジャーナリスト。著書に「ルポ雇用劣化不況」(岩波新書 日本労働ペンクラブ賞)など多数。2009年貧困ジャーナリズム大賞受賞。
非正規公務員の評価? マイナーなテーマだな、と思ったあなた。だが、それは間違いだ。非正規公務員の人事評価は、それが不公正な条件の下で行われたとき、いかに破壊的な作用の数々をもたらすかを示す陳列棚のようなものだからだ。それは民間の正社員にとっても他人事ではない危険をはらんでいる。
昨年9月、ハローワークの職員が架空の求職者を登録したうえで自身がその求職者になりすまして採用面接を受け、就職件数を引き上げていたことが分かった。厚生労働省の昨年12月の発表によると、この職員は9社で13件の求人に応募し、4件の就職件数を計上、戒告処分となった。
この職場では、職員1人当たり月12件という独自の就職達成目標を定めていたが、この職員は自発的に月30件という目標を決め、その達成が危うくなって、なりすましに及んだという。
この事件を耳にしたとき、非常勤職員が引き起こしたのかと思った。国の非常勤職員は「期間業務職員」と呼ばれ、1年限りの任期だ。年度末にはいったんクビになることが法定化されているので、次年度の任用を巡って激烈な競争が起き、よい評価を得ようと目標達成に必死になる職員が少なくないからだ。
「正規職員だったんですね」と非正規職員に言うと、彼女は「そりゃそうですよ」と苦笑した。「非正規だったら即クビか、年度末でお払い箱です」
正規公務員は身分保障が原則だ。一方、1年限りが原則とされる非正規公務員にとって、目標の未達成は失業という極限状況が待っている。評価という一見公正に見える仕組みが働き手にとっては凶器にもなりかねない。この項では、それらが起きうる条件を非正規公務員たちの体験から明らかにしていきたい。
前回述べたように、起きるはずがないとされたものは調査の対象にならず、調査がされないためリスクは証明されず、リスクが分からないので調査費用も集まらないという悪循環が、そこに生まれる。
「女性の過労死があるかもしれない」という社会的合意の形成と、これに基づく調査の実施は、「女性のため」ではない。働く人すべての過労死を防ぐためなのだ。