「五輪休戦」破るのか?
玉木 正之
たまき・まさゆき スポーツ文化評論家,日本福祉大学客員教授。著書に『スポーツとは何か』(講談社現代新書)など多数。近刊は「真夏の甲子園はいらない 問題だらけの高校野球」(編・著、岩波ブックレット、2023年)
2月6日から22日までミラノ・コルティナ冬季オリンピックが開かれた。そこでテレビや新聞は、誰が金メダルを取るか? 日本人選手の獲得メダル数は? と大騒ぎ。
だが、そんななかで忘れられたのが、昨年11月19日の国連総会で満場一致で決議された「オリンピック休戦」だ。
正式には「スポーツとオリンピックの理想を通じた平和でより良い世界の構築」という名称の国連決議。冬季五輪開幕1週間前の1月30日からパラリンピック閉幕後1週間の3月23日まで約2カ月間、全世界での武力行使の休止を、ロシアもベラルーシも北朝鮮もウクライナも、アメリカもイスラエルもイランも含む、国際連合全加盟国が賛成した「休戦決議」なのだ。
とはいえ22年の北京冬季五輪の直後には、ロシアがベラルーシの協力を得てウクライナに侵攻。その結果両国は「五輪休戦決議違反」の罰として、今も国際オリンピック委員会(IOC)から五輪や国際スポーツ大会への〃国〃としての参加を認められないでいる。
今年1月7日、アメリカはベネズエラの首都カラカスを空爆。マドゥロ大統領夫妻を麻薬密輸容疑でアメリカへ連行した。が、これは明らかに「五輪休戦決議」を意識した「急いだ行動」だったとも言えた。
その後もアメリカは隣国のコロンビアやキューバへの武力行使をほのめかしたり、グリーンランドの割譲を要求。イランの反政府デモを支持して攻撃空母をペルシア湾に派遣し臨戦態勢を敷いている。
もしもアメリカが五輪休戦期間中に武力行使に出たらどうなるか? アメリカ選手の五輪参加が危ぶまれるうえ、2年後のロサンゼルス五輪にも影響が出るかも…。
今オリンピックは日本人選手のメダルどころか、重大な岐路に立たされているのだ。