斎藤貴男「レジスタンスのすすめ」


 

       

     愚かな夢物語を捨てるべき時

 

 


 さいとう・たかお 新聞・雑誌記者を経てフリージャーナリスト。近刊「『マスゴミ』って言うな!」(新日本出版、2023年)、「増補 空疎な小皇帝 『石原慎太郎』という問題」(岩波現代文庫、2023年)。「マスコミ9条の会」呼びかけ人。


  

 米国内の「トランプ離れ」が急激に進んでいる。彼の〃アメリカ・ファースト〃なる主張が、2024年の大統領選で彼に投票した人々の期待とは異質なものだった現実が明白になってきたためだ。

 この間の分析や最近の報道などを総合すると、支持者たちの多くは、山積する国内問題の解決に尽力してくれると思い込んでいた。ロシアの侵攻以前からのウクライナ支援をはじめ、他国の外交や政治に介入しては火種を持ち込むのが常だったバイデン前政権に嫌気がさしていた。

 ところが今回の第2次トランプ政権は、この上もなく好戦的だ。まず昨

年6月にイランを空爆。イスラエルのネタニエフ首相にガザ攻撃のGOサインを出したのが9月で、この1月にはベネズエラを地上攻撃し、マドゥロ大統領まで拘束した。かねて要求していたデンマーク領グリーンランドの領有についても、軍事力の行使さえ辞さない構えという。

 一方で国内では、バイデンが進めたDEI(多様性、公平性、包摂性)

政策の破壊ばかりが目立つ。行き過ぎの是正はトランプ人気の一因でもあったが、たとえばミネアポリスの市民を移民取締当局が射殺した事件まで許容する支持者が多数派だとは思えない。

 〃振り子の揺り戻し〃にしても酷すぎる。トランプは国内外を問わず、地位を利用しては、ただただ気に食わない存在を葬り去っているだけであるように見える。

 米国という覇権国家は、保守とリベラルの間で絶妙のバランスを取っているようでいて、その実、何もかもが軍産複合体に委ねられているのではないか。もちろん立証は不可能だけれども。

 それでもハッキリ言えることがある。安倍晋三政権の頃から多用されるようになった「日米両国は普遍的な価値を共有している」などという愚かな物語を、すぐにも放棄することだ。