問題だらけのFIFAだが


       

        玉木 正之

 

たまき・まさゆき スポーツ文化評論家,日本福祉大学客員教授。著書に『スポーツとは何か』(講談社現代新書)など多数。近刊は「真夏の甲子園はいらない 問題だらけの高校野球」(編・著、岩波ブックレット、2023年)    


 

 昨年12月5日、アメリカの首都ワシントンで、今年のサッカー・ワールドカップ北中米大会の抽選会が行われた。

 そこで驚いたのは、トランプ大統領に「第1回FIFA(国際サッカー連盟)平和賞」が授与されたことだ。

 これにはイギリスの人権団体フェアスクエアが「現職の政治家への賞の授与はFIFAの中立義務に違反する行為」と抗議。アメリカのCNN放送も「FIFAがトランプを喜ばせるために賞を作った」という政治評論家の意見を放送。「トランプは贈り物を受け取ったり与えたりする王様のような世界を望んでおり、そこに付け込んだFIFAに我々の大統領が子ども扱いされ、オモチャを渡されたのは屈辱的」と嘆いた。

 世界中から批判の声があふれ出た「FIFA平和賞」は、FIFAのインファンティーノ会長が独断で決めたらしく、彼は自らのインスタグラムでも、抽選会の2カ月前に「トランプ大統領こそノーベル平和賞に相応しい」と書き込んでいた(BBCジャパン)。

 それが、トランプ大統領からW杯への多大な支持を得るためのインファンティーノ会長の戦略だとしても、それによってW杯がさらに素晴らしい大会になるとも思えず、賛成派と反対派にアメリカを分断し、さらに世界を分断している人物を支持する立場を取ったFIFAは、政治からの独立というスポーツ団体の理念をゆがめたと言うほかない。

 さらに今回のW杯ではFIFAが入場券の転売を許可。そのためサッカーの試合を見ない投資目的の購入者の転売が始まり、既に百万円を超す高額入場券も出回っている。

 我々日本のサッカー・ファンは、FIFAのひどい政治的経済的行為とは無縁に、オランダやチュニジアとのW杯での対戦を応援しましょう。