「だまし討ち解散・総選挙」

  

 

 

    中野 晃一 上智大学教授に聞く

         


 

  高市早苗首相が通常国会冒頭での衆議院解散の挙に出ました。物価高対策など生活を支えるための予算審議がこれからという時の突然の解散に多くの人が驚きました。しかも、解散から投開票の2月8日までわずか16日間しかなく、判断材料も十分ではありません。総選挙で何が問われるべきか。中野晃一上智大学教授(政治学)は「有権者に全権委任を迫るだまし討ち解散」と指摘します。

     

 前回衆院選挙から任期の半分にも満たない1年3カ月余りでの解散総選挙。高市首相は就任からわずか3カ月です。また、2月投票の選挙は36年ぶりという異例の事態です。

 中野教授は「この時期に解散すれば、物価高対策などの予算の成立と執行は当然遅れます。選挙後に暫定予算でつなぎながら、短期間で本予算を強引に成立させようとするでしょう。疑問なのが、仮にもし政権交代が起きたら予算はどうするつもりなのかということです。また一から組み直すのか。その意味でも、無責任にも程がある解散といえます」と指摘します。

 食料品を中心とする物価高が私たちの生活を圧迫しています。その対策を遅らせてでも解散を強行した狙いは何か。

 「旧統一教会との癒着や裏金問題を国会で追及されたくなかったのだと思います。高市さんが就任後にしたことは、トランプ米大統領にこびてぴょんぴょん飛び跳ねたことと、台湾有事に関する発言で日中関係を戦後最悪の状況に追いやったことです。レアアースの対日輸出規制など日本経済への深刻な影響が避けられない状況です。そこで、支持率がまだ高いうちに、誰も予想しないこのタイミングで総選挙を行い、高市さんへの『全権委任』の信任を得ようと考えたのだと思います。いわば独裁者の手法です。国民に考える材料も時間も与えない。解散から投票まで16日間という日程は戦後最短です。野党だけでなく、有権者をもだます『有権者だまし討ち解散』といえます。一番喜ぶのは旧統一教会や裏金議員たち。与党が勝てば、国会は、戦争準備を進める高市政権の暴走を止められなくなることが懸念されます」

 

●米国との関係見直しを

 

 では選挙の争点はどうあるべきでしょうか。中野教授は「一つは、高市さんを『信任』するかたちにしてはいけないということ。もう一つは、戦争に突き進んだ戦前日本のような後戻りできない状況になる前に、政治の右傾化を食い止め押し戻していく転換点にしなければならないということです」と話します。

 そして、こう付け加えます。「高市さんの存立危機事態発言は、台湾有事の際に日本が米国と軍事作戦を行う準備を進めていることを明らかにしました。安保3文書の改定や敵基地攻撃能力など憲法の枠組みをはるかに超える軍事化が進んでいます。今、国際法を無視するトランプ大統領の米国との不均衡な同盟関係を強めることが、日本の安全保障や国防のためになるのかということが問われなければなりません。このまま中国との関係を悪化させれば、米国への従属が強まります。米国製武器の爆買いなど日本はさらに貢がされるのに、安全は危うくなるという、最悪の道を進んでいます。社会保障や生活への国の支出は削減され、私たちの暮らしに重大な影響が及びます」

 

●左派のいない中道ありえない

 

 突然の解散を受け、最大野党の立憲民主党と、昨年自民党との連立を解消した公明党が合流し、新党「中道改革連合」を結成することになりました。

 中野教授は「だまし討ち解散に対する緊急避難、極右化阻止の点で、理解できる部分はありますが、未知数と言わざるを得ません。公明党との連携に全てをゆだね、これまで一緒に頑張って来た人たちを切り捨てたり、信念を曲げたりしないことが大事です。右派しかいない下での「中道」はありえません。中道が自民党の補完勢力にならないためにも、立憲民主党のリベラル派や共産党や社民党などの左派の役割が大切です。平和と生活を守る、市民と野党の共闘の再構築を見据えた闘いを期待したいと思います」。