女性の過労死(13 )
全ての過労死防ぐため
竹信 三恵子
たけのぶ みえこ 朝日新聞社学芸部次長、編集委員兼論説委員などを経て和光大学名誉教授、ジャーナリスト。著書に「ルポ雇用劣化不況」(岩波新書 日本労働ペンクラブ賞)など多数。2009年貧困ジャーナリズム大賞受賞。
男性も過労死の被害者だ。それなのになぜ「女性の過労死」を問うのか。最終回は、その疑問を整理しておきたい。
理由の一つはサービス産業化だろう。サービス産業の仕事の多くは、これまで「非力な女性でもできる楽な仕事」として扱われ、その負荷の重さを無視されがちだった。「楽な仕事」に労災など起きるはずもないから労災対策は進まない。それが高じると、この職場での過労死は個人の事情と片付けられ、本人の過失や不運として遺族もあきらめざるをえないことになる。
連載第5回の家事・介護労働者や、第8回の客室乗務員の死はその代表例だ。
このようにして過労を防ぐ手立てが十分に講じられない職場に男性が進出した場合、第7回のような事態が起きうる。不慣れな新人で、かつ「男は弱音を吐くな」という倫理をたたき込まれがちな男性が看護師となり、過労自死した例だ。
女性の過労死に注目することは、筋肉労働、正社員、フルタイム、など男性を中心とした従来型の「労働」観によって見過ごされてきた、サービス産業中心社会のリスクを明らかにする。そこで働くことが増えている男性や高齢者も含め、どのような働き方でも守られる過労死防止策の整備のために、「女性」の過労死を究明することは不可欠、ということになる。
前回述べたように、起きるはずがないとされたものは調査の対象にならず、調査がされないためリスクは証明されず、リスクが分からないので調査費用も集まらないという悪循環が、そこに生まれる。
「女性の過労死があるかもしれない」という社会的合意の形成と、これに基づく調査の実施は、「女性のため」ではない。働く人すべての過労死を防ぐためなのだ。