松久染緒 「 随感録」
財政破綻の恐れを回避するには
まつひさ・そめお 元損保社員、乱読・雑学渉猟の読書人で、歌舞伎ファン。亥年生まれ。
歴史は繰り返す、この道はいつか来た道、いやなことは見ない、理屈で考えずに雰囲気でやり過ごす。
12月19日、植田日銀総裁は30年ぶりに金利を0.75%に引き上げたが、依然として大幅な円安、国債の信用落ち、インフレ状況は変わらないようだ。
経済の低迷を積極財政で打開しようとして2012年末に登場したいわゆるアベノミクスが打ち出した1.大胆な金融緩和 2.機動的な財政出動、3.成長戦略の3本の矢は、実態は1.のみで、日銀に国債を引き受けさせ(財政法違反の疑い)、1200兆円もの赤字国債の借金を残して大失敗した。責任者の安倍首相はもはやこの世になく、黒田前日銀総裁は大勲章をもらって悠悠自適だ。
政策の効果や影響は長期間立たないと分からない。失敗と分かった時には責任者はおらず、情勢や環境が変わったのだと言い訳して、これまで政治家が責任を取ったことなど一度もないのだ。
にもかかわらずというか安倍首相の弟子を自負する高市政権が、綱渡りの連立政権を余儀なくされた結果、補正予算で大判振る舞いともいうべき財政出動だ。2026年度当初予算の成立に協力を取り付けた国民民主党にゴマをすって、年収の壁引き上げに合意した。そのほかも石油減税、住宅ローン減税、その他減税のオンパレードだ。だがちょっと待ってもらいたい。選挙目当ての減税どころか、近年100兆円を超える当初予算が30兆円の赤字国債を前提に成立している現実を直視しなければならない。つまり税収をはるかに上回る支出を当たり前といった予算が継続しているのだ。家計でも国家予算でも同じことで、収入を超えて支出すれば、いつか破綻するに決まっている。
一国の財政運営が行き詰まった時点では、国債発行全体がストップし、財政運営上の資金繰りができなくなる。(国が資金繰りに窮すれば破綻する。)
なにしろ1200兆円もの借金だ。仮に年30兆円の赤字国債を償還(弁済)したとしても、40年!もかかる計算だ。国の支出は、地方交付税交付金、国防費、社会保険・健康保険・介護保険、年金、借金の利払い費と、将来増えることがあってもけして減ることはないのだ。インフレ局面では、物価上昇率に見合う形で政府の歳出も増額していかなければ、国民の生活が回らなくなるのだ。
さらに悪いことには、近い将来少子化により労働人口が大幅に減少・不足し、経済が縮小し、税収も減少する。このため外国人の労働力を確保するため、移民政策を大幅に導入する必要があるだろう。
国の財政収支を黒字化するには当初予算で30兆円、補正予算を加えれば40兆円の国債を発行し続けている現状では、少なくとも30兆円の財政収支の改善が必要だ。そのためには、次のような増税策が必要と考えられる。
同時に、国民の医療費、介護費用、年金、地方財政について、現状の公費投入額の一定割合をカットした場合、それを補填すべき自己負担額の増額、受給年金額の減額、交付金の減額による地方公共団体のサービスの低下に伴う負担等とのセットで、財政が改善されることになる。
個人 : 消費税の増税、富裕層の所得税累進増税、金融所得の合算
ぜいたく品税の復活、相続税・贈与税
固定資産税・土地計画税の増税。
法人 : 法人税の増税、企業の内部留保に対する課税、
租税特別措置法による企業優遇税制の廃止、
その他 : 地方自治体間の税収の格差是正、政治資金の全額課税
また現状を正しく国民が認識し、理論的、合理的、公平・公正に政策を検討し、実行するために、次のような方策を取る必要があると考えられる。
政府から独立した財政機関を設立し、客観的かつ中立的な前提にもとづく経済・財政の見通し計画を毎年発表すること。
毎年度の財政収支を改善するうえで税制面、歳出面でどのような具体的な方策を取ればどの程度財政が改善されるのかに関するデータを国民に公表する。
総選挙の際に、政党が歳出歳入の両面について具体的な金額を伴う財政改善計画を発表すること。
1200兆円の赤字国債など見ぬもの潔し、考えたくもないというのが多くの国会議員の本音だろう。いつか誰かが何とかしてくれる(!)わけは絶対にないのだ。
どうして無謀にもあの経済力、生産力、軍事力、何をとっても勝てっこない相手との戦争を推し進め、320万人もの犠牲とともに国家が廃墟になったのか。
それは客観的、論理的、合理的な判断でなく、情緒的、希望的、精神的な情動に拠ったことがすべての原因でなかったか。財政破綻の直前という現在の我が国の財政状況に鑑み、今こそ先の敗戦の教訓に立ち戻らなけれならない。
国会議員は、選挙民に嫌われても、命を懸けて財政状況を正しく論理的に理解し説明し、必要な改善策(法律)を提起しなければならず、それこそが選ばれた国会議員の仕事なのだ。
また我々有権者も当然ながら、国の現状を正しく客観的に理解し、必要な行動(負担)を辛抱して我慢強く、長期間にわたって継続していかなければならない。日本に住み続けるということはそういうことなのだということを肝に銘じなければならない。