非正規公務員の評価 

        (5)「勇気出す」の条件   

                                

             竹信 三恵子


 たけのぶ みえこ  朝日新聞社学芸部次長、編集委員兼論説委員などを経て和光大学名誉教授、ジャーナリスト。著書に「ルポ雇用劣化不況」(岩波新書 日本労働ペンクラブ賞)など多数。2009年貧困ジャーナリズム大賞受賞。


 非正規公務員の評価の不透明さを指摘すると、「勇気を出して声を上げないとね」と言われることがある。だが、人が「勇気を出す」には条件が必要だ。勇気を出して声を発すれば受け止めてくれる誰かがいること、それによって何かが変わると思えることだ。

 労働基本権を制限され、1年でクビを切られる職員と定義されている非正規公務員が「勇気」ある闘いに挑んだ例はいくつもある。

 2024年度末に任用期限が来るとして、名古屋市の公立保育園の保育士約1200人の任用打ち切りが問題になったとき、顔をさらして抗議の記者会見に出た保育士はその一例だ。

 1年以内の職と法定化され、公務員だからと労働基本権まで制限されているのに、なぜそれができたの?とその一人に聞いてみた。答えは、「会計年度任用職員にされる前は特別職非常勤として民間労働者と同じユニオンで交渉しストもやった。当たり前の権利と思っていた」だった。

 つまり、信頼できる組合に支えられ、交渉すれば事態が動くこともあるという体験が、「勇気」の背景にあったということだ。

 それを聞いて思った。顔を出すのが怖い状況をつくられているのなら、顔を出さずに言いたいことを言える場をつくり、そこで何かを動かした成功体験を得るのが第一歩にならないか。

 当事者ネットワーク「非正規公務員vоices」が2026年3月、国会内で非正規公務員の人事評価をめぐる集会を開いた。その時、「怖くて顔を出せないなら全員覆面をかぶって発言したら」と提案した。

 「勇気」がなくても声を出せる仕組みを開発する――。権利保障の面でほぼ丸腰の非正規公務員たちが、そんな思いで開いた初の「覆面院内集会」について、次回紹介してみたい。