暇工作 「あかひげ弁護士・上條貞夫氏」
ひま・こうさく 個人加盟労組アドバイザー
上条貞夫弁護士が亡くなって丁度1年になる。所属しておられた東京法律事務所の「たより」で、改めて知った。
上条弁護士は暇たちの個人加盟労組の顧問弁護士でもあるが、暇とはおよそ半世紀のお付き合いである。何度もグラスを重ねた仲だし、「損保のなかま」の愛読者でもあった。が、なにより7年にわたる解雇撤回闘争を一貫してサポートしていただいた恩人である。いや、サポートというだけでは不十分だ。「ともに闘っていただいた」という方が正確だろう。なにしろ、闘争の決定打として「産業別スト権」の確立とその行使を提案され、事実、たたかいはそのシナリオ通りに進み、勝利したのだから。
同時に、上条弁護士はフットワークも軽かった。ある日、暇の友人の「彼女」と称する女性とその同僚が「相談したいことがあります」と暇を訪ねてきたことがある。相談ごととは、彼女たちが勤務する某医療機関が、残業代を支払ってくれない、というものだった。職場に労組はない。個人加盟労組に加入して対応するのがオーソドックスな方法だと考えたが、相手は医療機関と言っても個人経営の病院である。労組云々は直ちに彼女たちの気持ちに沿ったものではないようだった。そこで、暇は、とりあえず、上条弁護士を訪ねるよう勧め、法律事務所への道順を教えた。
数日後、2人から報告があった。「暇さん、ありがとうございました。上条先生が病院を訪ねて2人分の不払い残業代100万円超を現金で受け取ってきてくださいました」
えっ、もう?なんという早業!改めて上条弁護士に電話すると、「いや。彼女たちの一人が不払い分をきちんと記録していたせいですよ。先方、潔くその場ですぐ全額支払ってくれましたよ」
「それで、先生、きちんと手数料もらいましたか、と暇が問えば、「大丈夫です、規定通り○○円だけ」と。なにしろ、上条弁護士、事務所内では有名な(?)赤ひげ弁護士という噂もあったほどだし、依頼人は魅力的な女性たちだし…。余計なことに、暇は事務所側の経営まで気にかけてしまったのだったが。
理路整然。端正で信頼できる紳士、それでいて、骨身惜しまず動く身の軽さ。困った人には計算抜きで手を差し伸べる侠気。理想の名弁護士、それが上条貞夫弁護士だった。