雨宮処凛の「世直し随想」

 

 

      

      性被害告発に沈黙する検察 

 

 あまみや かりん 作家・活動家。フリーターなどを経て2000年,自伝的エッセイ『生き地獄天国』(太田出版/ちくま文庫)でデビュー。『生きさせろ! 難民化する若者たち』(07年,太田出版/ちくま文庫)で日本ジャーナリスト会議賞受賞。


 「もう耐えられない。生き地獄から解放されたいと思い、辞表を出さざるを得なくなった」。4月30日、大阪で記者会見を開いた女性はそう口にした。

 悲痛な声で語ったのは、検事として働いてきた女性。彼女は2018年、大阪地検トップの検事正だった北川健太郎被告から性被害に遭い、事件後、PTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症して休職していたという。

 被害を訴えた人がその後の二次加害でさらに傷つき、好きだった仕事を失い、組織を去らなければいけない――。

 こんなことが許されていいのかと愕然(がくぜん)とする一方、「日本の検察、大丈夫なのか?」という疑念も浮かぶ。ちなみに検察庁のサイトには、「検察庁の役割」として、以下の記述がある。「検察は、国家社会の治安維持に任ずることを目的とし、検察権の行使に当たって、常に厳正公平・不遍不党を旨とし、また、事件処理の過程において人権を尊重すべきことを基本としています」

 素晴らしい理念であるが、では今回の事件において、どこに「厳正公平」があり、どこに「人権を尊重」があったのか。「公益の代表者」であるところの検察組織が、検事正の卑劣な性暴力にさらされた一人の女性の人権を踏みにじったことについて、その存在意義は少しも揺らがないのか。

 女性は検事の仕事をやめたいと思ったことは一度もなく、「生きがいだった」と語っている。そんな女性の人生を破壊した、検事正と検察組織。検察はこのまま沈黙を続けるのか、しっかりと見届けたい。