富塚 明 「非核三原則」見直しへ地ならし進む

  

 

 

    とみづか・あきら 元長崎大学准教授

         (写真は本人提供)


 

  自民党は11月、国家安全保障戦略など「安保関連3文書」の見直しの議論を開始しました。非核三原則の見直しが焦点の一つになるとみられます。核兵器の問題に詳しい元長崎大学准教授の冨塚明さん(物理学)は「見直しへの地ならしが進んでいる」と警鐘を鳴らします。

 

 私は、世界各国の核兵器の動向と併せて、日本国内にある米軍基地・自衛隊基地の強化の動きを監視する活動を続けています。

 非核三原則の見直し、特に「持ち込ませず」について議論が必要だと主張する高市早苗氏が首相になりました。今後本格化する、自民党内の「安保3文書」見直しで、その検討が行われるとみられます。非核三原則の法制化を長年訴えてきた被爆者の思いに逆行するものです。

 これまで米軍は非核三原則の「持ち込ませず」を意識して、在日米軍基地への核兵器の持ち込みが疑われる情報の開示には極めて消極的でした。しかし、米国が近年、核兵器を含む「抑止力」で中国を封じ込める動きを強める中、核装備が可能な戦闘能力をあえて〃堂々と〃公開するようになりました。

 例えば、米軍は在日米軍基地内の戦闘機を核兵器の搭載が可能なF35Aに置き換える計画を進めています。青森・三沢基地には26年春に配備予定で、従来の戦闘機36機を置き換え、さらに48機に増やすと発表しています。

 核兵器を含む大量の爆弾を搭載できる爆撃機B52は2023年に続き、24年4月にも東京・横田基地に飛来しました。23年以前の飛来は1989年までさかのぼらなければならないほどで、2年連続は異例です。

 私は、核兵器を搭載できる戦闘機の配備や爆撃機の飛来は、非核三原則見直しの既成事実をつくろうとしているのだと考えます。

 

●トランプ政権の思惑

 

 3月には、核兵器を積載していないことの証明書を外国艦艇に求める「非核神戸方式」を採る神戸港に、米軍の掃海艦が証明書を提出せず入港しました。神戸方式が採用された75年以降、同港には米軍艦艇は一度も入港していませんでした。掃海艦とはいえ、前例を崩したのは、見直しの布石だと捉えています。

 米トランプ政権は中国の戦術核兵器に対抗するため、核弾頭を搭載する海洋発射型巡航ミサイルの開発を再び進めています。近い将来、横須賀や佐世保、沖縄などの港にこの核ミサイルを積んだ原子力潜水艦をかつてのように入港させようとするでしょう。しかし、2010年に「核持ち込み密約」がオープンになってしまったため、米国は非核三原則から「持ち込ませず」を削除させようとしているのです。

 

●核配備、核共有への道

 

 もし、そうなったら、「持たず」もいずれ崩れていく危険性があります。米国は北大西洋条約機構(NATO)加盟国でそうしているように、大手を振って在日米軍基地内に核兵器を持ち込むでしょう。それは事実上の配備につながりかねません。さらに日本が原子力潜水艦を保有することになれば米国の核ミサイルを日本が運用する「核共有」も現実味を帯びてきます。それらの核配備が中国などとの緊張を一層高め、核戦争を誘発しかねません。

 米政府が日本に対し、防衛費を国内総生産(GDP)比3.5%に引き上げるよう水面下で求めているということが6月、報じられました。この要求はさらに強まるでしょう。税金の多くが防衛費に費やされ、物価高対策や教育費、医療・社会保障費など、私たちの暮らしに直結する財源はどんどん削られてしまいます。

 非核三原則見直しの問題は、私たちの暮らしに直結する問題でもあります。

 

 非核三原則は核兵器を「持たず、作らず、持ち込ませず」とする日本の国是。佐藤栄作首相(当時)が1967年に国会で初めて表明し、71年に「政府は非核三原則を順守する」という決議が衆院本会議で全会一致で可決されました。その後も繰り返し決議が採択され、歴代政権も順守の立場を表明してきました。唯一の戦争被爆国としての世界に向けたメッセージです。