雨宮処凛の「世直し随想」
「日本人ファースト」の衝撃
あまみや かりん 作家・活動家。フリーターなどを経て2000年,自伝的エッセイ『生き地獄天国』(太田出版/ちくま文庫)でデビュー。『生きさせろ! 難民化する若者たち』(07年,太田出版/ちくま文庫)で日本ジャーナリスト会議賞受賞。
7月20日投開票の参院選にて、参政党が14議席を獲得した。
その事実に、ただただ驚いている。
背景には、既存の政治への不信感や絶望があるのだろう。そんな思いの受け皿が、「日本人ファースト」を掲げる新興勢力に集まったという現実。
躍進の背景には、奇跡的に様々なことのタイミングが合致したこともあると思っている。「失われた30年」の中、じわじわと貧しくなり続けた日本。韓国に平均賃金を抜かれ、GDPは中国、ドイツにも抜かれて2位から4位に。3年以上にわたる物価高騰に、昨年からは米の値段も高騰。そんな自分たちを傍目(はため)に、外国人観光客が自分たちには手の出ないものを「安い安い」と消費していく。貧しくなった日本の土地を、外国人が買っているという報道も耳にするようになった昨今。そこに6月に飛び込んできた、「中国系オーナーが突然板橋のマンションの家賃を2.5倍にし、民泊に転用」という報道。同じ頃、アメリカでは移民の取り締まりに抗議するデモ隊に州兵が派遣され、「燃やされる車」や「暴徒化するデモ隊」などの映像がSNSで拡散されていた。
そうして6月15日、参政党は三つの市議会選挙でトップ当選。翌週22日の東京都議選では、立候補した4人中3人が当選。参院選で14人の国会議員が誕生した。しかも、東京選挙区では2位での当選。
人々の「不安」と共鳴した「日本人ファースト」という言葉。ここから何ができるのか、考えている。