斎藤貴男「レジスタンスのすすめ」
不安覚える「朝日」社長の認識
さいとう・たかお 新聞・雑誌記者を経てフリージャーナリスト。近刊「『マスゴミ』って言うな!」(新日本出版、2023年)、「増補 空疎な小皇帝 『石原慎太郎』という問題」(岩波現代文庫、2023年)。「マスコミ9条の会」呼びかけ人。
朝日新聞がなんだか変だ。紙面の中身が薄くなった感が否めない。私たちの社会にとって危険な兆候ではないか?
折も折、角田克・朝日新聞社社長(60)を直撃したインタビュー記事が、「東洋経済オンライン」で配信された(6月23~25日)。興味深い内容なので紹介したい。
「民主的で自由な社会、個人の尊厳を大事にする社会の基盤となるのは、真っ当に取材、点検され、整えられた情報だ」
と、角田氏は語る。フェイクや誹謗中傷が溢(あふ)れるネット社会を改革し、この大前提を維保持するためにもと、朝日はデジタルの領域に力を入れていくという。「これまで50くらいの力でデジタルもやると言っていたのを100、200のパワーでやる」
なるほど現実路線だ。紙のジャーナリズムの世界とは異なるカルチャーゆえの苦悩も率直に語られたが、ここでは割愛。問題は、では今後の朝日ジャーナリズムはいかなる方向を目指すのか、である。
「メディアの存在価値は権力監視的な発想などにあって、政府とともに歩むことではない」
と角田氏は謳(うた)いつつ、ただし中心的メディアであるためには中立、中庸が必要だとも強調。従来は記事に記者の主張が入り込みがちだったのが失敗を招いてきたのでは、との認識を明らかにしている。
「原発1つにしても、「脱原発」と言う人もいれば、「原発を動かすしかない」と言う人もいる。(中略)だって、AIやデータセンターは原発がないと動かせないようなことも、みんなわかっている」
時代が変われば報道のあり方も変わる。当然と言えば当然の成り行きではあるものの、不安だ。朝日も読売新聞と同じような紙面を志向していくことになるのだろうか。関心を持たれた読者には、ぜひ全文を参照されたい。