雨宮処凛の「世直し随想」
世界の人道支援が危機に
あまみや かりん 作家・活動家。フリーターなどを経て2000年,自伝的エッセイ『生き地獄天国』(太田出版/ちくま文庫)でデビュー。『生きさせろ! 難民化する若者たち』(07年,太田出版/ちくま文庫)で日本ジャーナリスト会議賞受賞。
パリ協定からの離脱、WHO脱退、難民・移民への厳しい姿勢、反「DEI」、そして気候変動に対する後ろ向きの態度――。これらはトランプ氏が再び大統領の座に就いてからの数々だが、その中でも大きく報道されたひとつに「USAID(米国国際開発庁)」への予算・人員削減がある。
世界60以上の国で人道支援などをする取り組みで、ここへの予算をカットする動きには世界中から批判の声が上がった。が、日本の人々にとってはどこか遠い話だったと思う。
私もつい最近まではそうだった。が、6月7日、「のりこえねっと」のイベントで高遠菜穂子さんとご一緒し、その感覚は吹き飛んだ。
イラクのドホークからZoom出演した高遠さんは、トランプ再任によるUSAIDへの予算削減が、人道支援に取り組む国際NGOなどにどれほど激震を与えたか、話してくれた。
例えばプロジェクトが凍結したり、事務所が縮小したり、また解雇通知を受けたりといった話があちこちにあるそうだ。高遠さんはそこからの資金は受けていないものの、ただでさえ国際的な支援がウクライナやガザに集中する中、世界各地で活動を続けている人たちのこれまでの努力が泡と消えるような状況だというのだ。
ちなみに高遠さんは今、イラクの少年院で元ISの子ども兵の支援に取り組んでいるという。実刑を受けている人の中には、7歳で子ども兵になったなんて若者もザラにいるそうだ。息の長い支援が必要な場への予算も人員もカットされているという現実に、頭を抱えている。