消費税 廃止目指し当面一律減税を
元静岡大学教授・税理士 湖東京至さん に聞く
物価高が生活を圧迫しています。コメなど食料品を中心に高騰が続くとみられる中、消費減税に注目が集まっています。元静岡大学教授の湖東京至さん(税理士)は「消費税の廃止をめざし、当面、継続的な一律減税を行うことで景気回復への道が開ける」と話します。
消費税の税率を引き下げても、商品の価格がその分下がるとはいえません。でも、景気にはプラスに働きます。
中小零細企業にとって、消費税の納税負担はとても重く、従業員の賃上げ原資がないという事業者も少なくありません。減税による負担軽減で賃上げのすそ野が広がり、消費者の購買力の向上が期待できます。
ただし、食料品だけをゼロ%にしても、効果は極めて限定的です。景気を回復させるには、当面、一律の消費減税を行う必要があります。1年、2年の時限措置では足りません。
約3分の1が還付に
消費税には、大企業が優遇される仕組みが幾重にもあります。一番の問題は「輸出還付金」(輸出戻し税)です。輸大企業は国内で消費税を支払わずに、消費税収から還付を受ける仕組みのことです。
私は毎年、有価証券報告書などから輸出大企業上位20社の還付金額を推計しています。ダントツに多いのはトヨタ自動車です。2023年度は6102億円に上るとみられます。
なぜ、輸出企業が還付を受けるのか。それは、輸出の売上にかかる消費税はゼロ%とされ、仕入れや経費に掛かった消費税額を差し引くと、マイナスになるからです。トヨタ自動車は輸出が売上全体の77%(推定)にも上るため、還付が生じるのです。
23年度の「国税庁統計年報書」によると、消費税の納税申告合計額は21兆7396億円。ここから輸出大企業への還付金など7兆2653億円を差し引き、税収(国税分)は14兆4743億円となります。消費税収入の約33・4%が還付されているのです。 いわば、輸出大企業への補助金のようなものです。
応能負担原則から逸脱
政府は消費税を「社会保障の安定財源」と述べ、減税には後ろ向きです。
確かに消費税法には「社会保障給付並びに少子化対策の経費に充てる」とありますが、実際には他の税収と同じ「一般会計」に入れられています。社会保障の目的税ではありません。
消費税は1989年に税率3%で導入され、19年に10%にまで引き上げられました。24年度の消費税収は23・8兆円です。消費税導入前までは法人税と所得税が「税収の双璧」でしたが、法人税は基本税率42%から23・2%にまで下げられています。所得税や相続税の最高税率も同様です。「社会保障の財源を確保する」と言いながら、法人税や所得税の軽減を続けてきたのです。
税制の大原則は応能負担です。消費税は赤字でも徴収されます。本来あるべき原則を逸脱しており、悪税と言わざるを得ません。
消費税は廃止できる
私は、最終的に消費税は廃止が必要だと考えています。代替となる財源は、応能負担の原則に基づき、「不公平な税制をただす会」が次のように試算しています。
・所得税の最高税率を74年当時の75%に戻して13兆1932億円の増収
・法人税を累進課税にして最高税率を80年代半ばの水準に近い45%に引き上げて26兆7219億円の増収
・主に富裕層が対象となる金融所得課税を15%から30%に引き上げて12兆4525億円の増収
・相続税は最高税率を70%に引き上げ3兆9413億円の増収
合計56兆3089億円の増収が見込まれます。消費税収は地方消費税分を含め約30兆円ですので、十分まかなえます。