松久染緒 随感録
企業の内部留保600兆円の90%を超過利潤課税し
従業員の給与と下請けの支払いに回せ
まつひさ・そめお 元損保社員、乱読・雑学渉猟の読書人で、歌舞伎ファン。亥年生まれ。
日本経済は、昨年の二倍になった米価に象徴されるように、物価上昇(インフレ)に賃上げが追いつかず、実質賃金の減少が続いている。「企業が資金をため込みすぎている一方、労働者が正当な対価を受け取っていない」(水野和夫氏)のが原因だという。
政府は「デフレ脱却」といっているが実態はインフレで、あらゆる商品・サービスにかかる物価上昇(インフレ)に賃上げが追い付かず、私たちの生活は苦しくなる一方だ。
また、毎年100兆円予算のために30兆円の国債を発行し、すでにその総残高は1,000兆円を超える大借金財政となっており、その大半が日銀保有(アベノミクスの結果)となっている。これは事実上日銀による財政ファイナンスであり、「国の歳出は、公債または借入金以外の歳入をもってその財源としなければならない(第4条)」、「すべて公債の発行については日本銀行にこれを引き受けさせ・・・てはならない(第5条)」と財政法上おおいに疑義がある。GDPの200%以上の借金を抱える国は日本だけで、世界最悪だ。どうやってこれを返すのか、返せないのではないかと財政破綻の不安が現実のものになっており、特に現在および将来の生活のよりどころたる年金の破綻が危ぶまれ、政府の信用がなくなっているのではないか。
ところが日本企業は、大企業を中心に増収増益となっている。企業利潤が多すぎることが問題だという(水野氏)。企業の 内部留保は、何と600兆円を超えている。経営者は不確実な将来への備えや設備投資を内部留保確保の理由にしているが、一向に取り崩すこともなくそのようには見えない。
そこで、水野氏は「超過利潤課税」を行えばいいという。(毎日新聞6月8日朝刊)その税率は90%くらいでもいいと。仮に内部留保の90%なら540兆円で、これはGDPに相当する巨大な金額だ。そうすれば「税負担でとられるくらいなら、従業員の給料を上げたり、取引・下請け業者に支払う代金・費用を増やした方が有利になるのでは」と考える企業も出てくると。
ただし、この「超過利潤課税」という考えは、企業・財界から強烈な反発が来ることは間違いない。実現は極めて難しいのではないか。
そこで野党に期待するという。「超過利潤課税を導入すれば賃金が飛躍的に上昇し、購買力もアップする。」とアピールして国民的な議論を巻き起こすのだ。その結果、従業員の生活が大幅に改善され、消費拡大につながり、日本経済が成長し、人口減少・少子化問題の解消にもつながって来るのではないか。