組織による不正・隠蔽は続いている

 

 


 まえだ いさお 元損保社員 娘のいじめ自殺解明の過程で学校・行政の隠蔽体質を告発・提訴 著書に「学校の壁」 元市民オンブズ町田・代表


 

 次女晶子が自死して34年になる。

 2020年11月、町田市の小学6年生の女児がインターネットなどを使ったいじめを苦にして自殺した。この子のご両親が、「学校の壁」を読んだということで、先日、私の家に来てくれた。

 なぜ、娘が自殺しなければならなかったのか、知りたいのは親として当然の思いだ。今回のご両親も同じ思いだと思う。

 事実を解明しようとする私や家族に対して、教員たちや学校・教育行政は嘘と隠ぺいを繰り返して対抗してきた。やむなく、私たち家族は、情報公開や裁判制度を使って、事実解明に取り組み、裁判では実質勝利の和解を勝ち取った。求めていた「生徒たちに晶子の死について書かせた作文」も読むことができた。

 和解条項は異例の長文で、学校や市教委は自分たちが行った隠蔽行為やウソの数々について、「深謝」している。そして、今後同種の事態が発生した場合、「誠意をもって、情報を交換し、真摯に話し合い、問題の解決に図るために最大限の努力をする」と約束している。

 町田市小6自殺事件の新聞記事を見たとき、この和解条項をご両親に届けることができたら、お役に立てるのでは…と思ったが、具体的に住所を探したりしないままになっていた。ありがたいことに、先方から、私を探してくれ、自宅まで来てくれた。

 私の経験がご両親のお役に立てれば、と思ってお話を伺った。

 

 今回の事件では、町田市長が第三者委員会を作っている。ご両親はその委員会が怪しいと感じている。私も、そう感じる。

 調査報告書は結論的に、「いじめはあったと認定する」「学校及び家庭の適切かつ十分な対応によって自死を防げた可能性は否めない」「重大事態の原因は複合的なものであり、学校要因も一因ではあるが、これのみが自死の原因とは特定できない」と述べている。

 ご両親の話では、委員がご自宅に来ることは来たが、あいさつに来た感じで、事件に関する聴き取り調査というようなものではなかったという。 

 そんな調査で、よくも、上記のような結論を出せるものだ。

 この怪しい第三者委員会の裏に何があるのか、詳しく知りたいと思うのは私だけだろうか。 

 こういう結論を、校長や教育行政関係者は、「我々には責任はない」と、受け止め、喜ぶ。

 現に、この報告書の発表の記者会見で、市長は嬉しそうな表情で語っており、それを受けた委員長も、似たような表情を見せている。

さらに、ある方からの情報によると、この発表の前か後かは定かではないが、市長は市内での会合(自身の選挙後援会?)で、「あれは、学校に責任なんかない。家庭に問題があったから亡くなったんだ。そのことをどんどん言いふらしてくれ」と述べているそうだ。腹立たしい限りである。

 

 大津のいじめ自殺事件(2011年10月発生)でも、市長が第三者委員会を作っている。そのメンバーは、遺族側が推薦する人が3人、市長側が選んだ人が3人である。   調査の詳細は知らないが、その調査報告書は、外野の私から見て、まあよくできた報告書だと思う。

 その後、いじめ防止対策推進法ができたわけだが、第三者委員会は、遺族の推薦する人を半数は入れることが定番になり、これが条件となるだろうと思っていた。しかし、今回、ご両親の話を伺ってから調べてみると、そうなっていない。文科省のガイドラインを読むとそうすることが望ましいとは言っているようだが、必要条件とはしていない。

 

組織による不正・隠蔽は続いている

 

 昔から、文科省はいじめなどについて、その数字や実態を報告させてきたが、最近はそれが、より頻繁になっている。その数字は、校長の評価につながるそうだ。

 昔、私の娘の自殺があった数日後、まだ私と市教委が対立していなかった当時、市教委の指導課長と話したことがある。その時、雑談の中で、彼の言った言葉を覚えている。

「前田さん、いじめや問題行動の調査をしても、校長や教頭が、『何件くらいと報告すればいいんですか』と聞いてくるんですよ。情けない話です」と言っていたのを思い出す。同じようなことがいまだに行なわれているのかと腹立たしい。

 私は、「組織が人間に不正をさせる」という問題に長く取り組んできた。きっかけは「娘の死の真相を知りたい」ということからであった。教育の世界での組織がさせる不正は、子どもたちの幸せ、時には生死にかかわる。

 ご両親の話では、町田小6いじめ自殺事件の当時の校長は、事件後、渋谷区の教育長に栄転したそうだ。近年は、校長の多くは教育委員会の職員を経てから校長になるのが多いようで、教委の職員にすれば、いわば先輩たちを管理しているわけだ。正しく管理するのは難しいと言える。

 国の外郭団体でも不正が多い。それは、その長にはほとんど、その団体を管理する省庁のOBが天下る。そして、省庁人事も実質はそのOBたちが口を出して決まっていくという。

 今回の事件には、行政が学校に配布したタブレットが関係している。そのシステムや配布に、国は何百億というカネを出している。この事業に天下りの力が加えられているのかもしれない。