守屋 真実 「みんなで歌おうよ」
もりや・まみ ドイツ在住27年。ドイツ語教師、障がい児指導員、広島被ばく2世。父は元千代田火災勤務の守屋和郎氏
能登から届いたお米
あったかフードバンク大泉は、大泉生協病院でコロナ禍の2021年3月から始まり、今年5月で50回目を迎えた。私は実行委員ではないのだけれど、国会周辺の仲間に声をかけて毎月カンパを集めている。最初の頃は40人前後だった来場者がどんどん増え、むしろコロナが下火になった2023年秋頃から100名を超えるようになった。現在では、毎月150人前後が利用している。当初は若い世代が多かったが、最近は大半が高齢者である。そのフードバンクが今、窮地に陥っている。
米が無いのだ。あっても高すぎて買えない。なんてこった!マルコポーロの時代から黄金の稲穂がたわわに揺れる国だった日本で、米が足りなくなるなんて!
自民党政治が長年自動車産業や鉄鋼業などの重工業ばかりを優先して農家を冷遇し、アメリカの言いなりになって食料自給率を下げてきたツケが回って来たのは明らかだ。それに加えて、江藤農相の「米は買ったことがない。自宅には売るほどある」というトンデモ発言。非常識というべきか、厚顔無恥というべきか、知性も良識もなさすぎる。沖縄のひめゆり記念館に対して事実を歪曲した発言をした西田参議院議員といい、よくもまあこれだけ低劣な人材を集めたものだ。自民党議員は不作を超えて、大凶作だ。このところ腹の虫が収まるときがない。
腹を立てながら新聞をみていたら、雑誌「女性自身」の広告に『野菜でかさましご飯が米出費月2270円減らす』とあった。まるで戦時中ではないか。(今は野菜だって高いから、そんなにかさましできないぞ!)市民がまともなご飯も食べられないなんて、国防どころか亡国だ。原発立地地域は米どころであることも忘れてはならない。万一事故が起きたら、本当に飢餓に襲われるだろう。このうえ若者を戦場に送るようになったら、誰が食料を生産し、誰がインフラを整備し、誰が流通を担ってくれるのか。
それでも、いいこともあった。生協病院の組合員が知り合いの農家に掛け合ってくれて、なんと能登から米が届いたのだ。それも市価の半額で譲ってくれたそうだ。一番困っているはずの人が、或いは苦労を知っているからこそ困窮者への思いやりを失わないなんて、胸が熱くなる話だ。私の仲間たちも「お米が高くて大変でしょう」と、みんなが自発的に少しずつ多くカンパしてくれて、これまで月3万円くらいだったものが、4月、5月には4万8千円も集まった。こんな優しい人がいるのだから、この国もまだ捨てたものではないと思える。フードバンクは何としても続けたいと思う。こんなひどい時代だからこそ、助け合うことを忘れてはならない。
戦時中に「戦争は罪悪である」と発言し逮捕され、宗門からの資格を剥奪された真宗大谷派の反戦僧侶竹中彰元は、村の在郷軍人を相手に「戦争をしても利益はない、非常に損だ」と説いたそうだ。本来なら俗世の利益を論じるべきでない僧侶が敢えてそれを言ったのは、仏教の教えから反戦を語るよりも「損得」が庶民にわかり易いことを知っていたからだろう。民主主義や人権を声高に叫ぶよりも、身近な生活の問題の方が市民の目を覚まさせるだろう。多くの人が苦しい生活を余儀なくされている今、これまでの自民党政治のほころびが目に見えて現われている。多くの人が自民党政治の支離滅裂さに気付き始めている。この米不足が日本を変える契機になるかもしれない。次の選挙で流れを変えよう!