フジテレビ第三者委員会への期待
まえだ いさお 元損保社員 娘のいじめ自殺解明の過程で学校・行政の隠蔽体質を告発・提訴 著書に「学校の壁」 元市民オンブズ町田・代表
フジテレビの第三者委員会は、「3月末をメドに提言する」ことになっている。どんな調査を行い、どんな報告書が出されるのか、注目している。
第三者委員会は、その名が示すとおり不祥事の当事者である企業等から独立した第三者的立場で、利害関係やしがらみにとらわれず中立公正な判断を示すというところに存在意義がある。
異例の10時間会見の中で、同社の経営陣は、今回の第三者委員会は、日弁連のガイドライン(以下、ガイドラインという)に基づくものであると明言していた。
ガイドラインでは、第三者委員会は、不祥事を起こした企業・自治体等の組織がステークホルダーに対する説明責任を果たす目的で設置するものであるとしている。
ここで想定されているステークホルダーには、当該企業などと直接の取引・利害関係にある株主や投資家、取引先、従業員、債権者などに限らず、広く消費者、地域住民など、またこれらの声を代弁するメディアなども含まれる。一視聴者に過ぎない私のような者もステークホルダーの端くれとして、納得の行く説明を期待したい。
第三者委員会を立ち上げ、調査を委嘱し、その経費の支払いを決定するのは、社会を騒がせることとなった不祥事の当事者である企業や団体、今回で言えばフジテレビとそのグループのホールディングスであり、それらの経営陣である。第三者委員会を設置した彼らの目的は、批判の沈静化、炎上の鎮火である。しかし、彼らの思うような調査結果になる保証はない。思いもしなかった内容になるかもしれない。それでこそ、真の第三者委員会と言える。
ただ、「第三者委員会」と言ったり「外部調査委員会」と言ったり、名称はいろいろあるが、「本来的な意味での第三者委員会とは似て非なる委員会」が、あたかも公正な調査を行ったかのように見せかけて事態の幕引きを図ろうとするケースが多い。それらは、調査結果や調査手法の歪さから露呈する。こうした事案では、いくら「外部の弁護士が中立・公正な立場から調査を行った」と弁明されたとしても、「本当に公正な調査が尽くされたと言えるのか」という疑念は払拭できない。
ガイドラインでは、企業等と利害関係を有する者は委員に就任できないという形式的な基準を設けているが、それを搔い潜る手段はいくつもある。それまでは取引関係がなかったとしても、その後、委員になった弁護士の所属する事務所に別の案件で多大な報酬を出すとか、委員の仲良しの弁護士を顧問に迎えるなど裏の手はいろいろあるようだ。
もう一つは、コストの問題だ。
正式の委員の数は3~5人というのが多いが、委員の属する大手弁護士事務所や会計事務所のスタッフが何十人も、補助員として動員される。
ガイドラインでは、委員の報酬は時間制(タイムチャージ)を原則とするとしている。かなり昔、知人の弁護士から聞いた話だが、大手弁護士事務所では、1時間10万円という例もあるという。
このタイムチャージで、1日8時間、1週5日、3カ月(12週間)、弁護士30人が狩りだされたとすると、単純計算で14億4000万円になる。
さらに昨今は、スマホやパソコンに記録された情報(消去された情報も復元)を分析する「フォレンジック調査(デジタル鑑識)」と言う手法も使われる。費用は、端末1台あたり数十万~数百万円が相場だという。何十台何百台のスマホやパソコンを調べなければならないだろうから、その額は何億円かになる。「第三者委員会」の報告書でその詳細金額が明示された例を筆者は知らない。
コストの総額が明確にされたケースは少ないが、中には20数億円という例もある。
フジテレビ問題については、世間からの注目度が特に高い。いい加減な騙しの手口は通用しないとフジテレビも考えて臨んでいるように思う。というのは、今回の第三者委員会の委員に24年8月号で触れた、『第三者委員会格付け委員会』のメンバーである竹内朗弁護士を入れているからだ。
今回フジテレビから委員を委嘱された経緯の詳細、かかった費用の総額・内訳なども公表し、格付け委員会の委員たちが、AやBをつけるような報告書を期待したい。
(第三者委員会格付け委員会については、http://www.rating-tpcr.netを見てください。)