女性の過労死(12 )

         

         第一歩としての調査

     

                                  竹信 三恵子


 たけのぶ みえこ  朝日新聞社学芸部次長、編集委員兼論説委員などを経て和光大学名誉教授、ジャーナリスト。著書に「ルポ雇用劣化不況」(岩波新書 日本労働ペンクラブ賞)など多数。2009年貧困ジャーナリズム大賞受賞。


  ここまで取り上げてきた女性の過労死には共通点がある。見えにくいということだ。

 被害者の多くは介護士、看護師、保育士、家事労働者、教員、公務など、対象者のために献身すべきとされる「ケア的労働者」だ。献身が原則なら、権利主張や条件改善などを求めるのは逸脱となる。

 女性国会議員、山谷えり子氏による「家事は家族への愛の行為。無償労働などと呼ぶべきではない」という発言は、その代表格だ。

 そこには、労働とは19世紀の男性の工場労働のこと、というイメージがある。そのため、ケアなどの女性労働は労働者保護から外され、過労死が起きても、ただの「事故死」「病死」「自死」で終わる。

 東京都は2024年、1年有期の会計年度任用職員のスクールカウンセラー約250人の任用を打ち切り、うち10人が地位確認や慰謝料を求めて提訴した。

 その原告の一人である女性は、子どもに寄り添うことを第一と考え、労働権など考えたことがなかったという。だが、親から「頼りにしていたのに先生はいなくなるのか」と泣かれ、「子どもに寄り添うには労働権についても考えていかなければと初めて思った」と述べている。

 こうした不可視状態は、過労死の実態調査を阻む。「女性の仕事が男性より安全に見える理由は調査がされないからだ」(カナダの人間工学者、メッシング)との言葉通り、ないものは調査の対象にならず、調査がされないためリスクは証明されず、リスクが分からないので調査しようと思わず、調査費用も集まらないという悪循環が生じる。

 女性の過労死を防ぐ第一歩は「それがあるかもしれない」という社会的合意と、これにもとづく調査の実施であることがわかる。