戦後80年 損保9条の会・生保9条の会創立20周年 記念講演会
いま日本で起きていること 平和実現の道を考える report
前田功(本誌編集委員)
10月18日(土)、東京・王子の北トピアで「戦後80年 損保9条の会・生保9条の会創立20周年 記念講演会」が開かれた。演題は「敵基地攻撃と日米一体化 防衛費倍増は国民負担に」で、講師は防衛ジャーナリストで元東京新聞論説兼編集委員の半田滋さんだった。
憲法9条は戦後の反省から、日本が二度と戦争を起こさない平和国家を目指して生まれた条項である。そこには「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては永久にこれを放棄する」とあり、「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」と規定され、国の交戦権も否定されている。世界人権宣言が掲げる「平和的生存権」や「生命権」の実現を目指すもので、世界に誇れる条項だと私は考える。
しかし、9条の文言自体は変わらないまま、時の権力者の都合でその解釈が変わってきた。最初の解釈変更は、自衛のための必要最小限度の戦力保持を認め、自衛隊の存在を容認したことである。その場合でも専守防衛に限り、他国を攻撃する目的の武力行使は行わないとされてきた。自衛隊が行使できるのは「必要最小限の実力」であり、行使は日本の領域とその周辺に限定されていた。
ところが2014年、安倍内閣は解釈を変更し、「我が国の存立が脅かされ、国民の権利が覆される明白な危険がある場合」には集団的自衛権を行使して武力行使ができるとした。これにより、有事における外国軍との協力が法制化された。この解釈変更と関連法制の成立について、私たち9条の会は強く「立憲主義に反する」と批判した。
さらに2022年、岸田内閣は閣議決定で「敵基地攻撃能力の保有」を明記した。現在は日米一体化を進める動きがあり、指揮系統の連携強化が叫ばれている。自衛隊は情報力・攻撃力の面で米軍に劣り、結果として自衛隊が米軍の指揮下に置かれ、主体的判断を失い、憲法や国内法が無視される懸念がある。
ここまで来ているのだ。思えば遠くへ来たもんだ。
以下に、半田滋さんの講演から特に伝えておきたい点を簡潔に列記する。
防衛予算の増額はテレビや新聞でも報じられているため割愛するが、その恩恵を受けているのは大手防衛産業と防衛省からの天下りたちである。23年度の契約額と23年度までの防衛省・自衛隊からの再就職者数はおおむね次の通りだ。
• 三菱重工業:1兆6,803億円、対前年度比4.6倍、再就職者19人(統合幕僚長、陸上幕僚長、海上幕僚長等)
• 川崎重工業:6,803億円、対前年度比2.3倍、再就職者12人(統合幕僚長等)
• NEC:2,954億円、対前年度比3.1倍、再就職者16人(海上幕僚長等)
• 三菱電機:2,685億円、対前年度比3.6倍、再就職者12人
• 富士通:2,096億円、対前年度比3.2倍、再就職者9人(関連会社に事務次官など)
また、アメリカ政府も対外有償軍事援助(FMS)で利益を得ている。
次に「台湾有事」についてである。安倍元首相は尖閣諸島や与那国島が台湾から離れていないことを指摘し、台湾への武力侵攻は日本に対する重大な危険を引き起こすとして「台湾有事は日本有事であり、日米同盟の有事でもある」と述べた。麻生太郎氏は「台湾有事は存立危機事態に関係してくる可能性が高い。日米で一緒に台湾を防衛しなければならない」との見解を示している。
「存立危機事態」とは、2015年の安全保障法制で自衛隊法76条1項2に追加された概念で、「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」を指す。
台湾周辺で事態が拡大すれば、米軍基地や日米共同で利用する施設が攻撃を受け、日本列島が直接の戦場になるリスクがある。米国の参戦が日本の有事につながる構図が語られている以上、軍備強化だけでは安全は確保されない。
昭和の時代には考えなくてよかったことを、今は真剣に考えざるを得ない。思えば遠くへ来たもんだ。