雨宮処凛の「世直し随想」

 

 

      

      送還に怯える子どもたち

 


 あまみや かりん 作家・活動家。フリーターなどを経て2000年,自伝的エッセイ『生き地獄天国』(太田出版/ちくま文庫)でデビュー。『生きさせろ! 難民化する若者たち』(07年,太田出版/ちくま文庫)で日本ジャーナリスト会議賞受賞。


 

 参院選以降、この国の空気は明らかに変わった。

 何かのタガが外れたかのように排外主義的な言説が容認されるようになり、多くのメディアで突然、「ルール・マナーを守らない外国人」というトピックが増えた。

 6月末には博士課程の学生への生活支援が日本人に限定されることになり、8月末には「アフリカホームタウン」についての誤情報が広まり、SNSでは目を覆いたくなるような差別・偏見の言葉が渦巻いた。同時期、大阪では移民反対デモが開催された。

 そんなこの夏、非正規滞在者の強制送還が相次いでいる。

 入管庁が5月に公表した「国民の安全・安心のための不法滞在者ゼロプラン」に基づくもので、在留資格がない外国人が送還されているのだ。その中には難民認定率の低いこの国で認定されない人や、さまざまな理由で在留資格を失った人も含まれる。

 もっとも送還におびえているのは子どもたちだ。日本生まれ、もしくは幼少期に親と来日。母語は日本語という子どもたちがすでに送還されている。日本での将来を夢見て勉強しているのに、ある日突然「帰れ」と言われ、行ったこともない上に言葉もわからず知り合いもいない国に「強制送還」させられるということが起きているのだ。

 8月末、送還におびえる小学生から大学生が集まり、入管庁などに思いの丈を訴えた。「日本で学びたい」「働きたい」「私たちの未来を奪わないでください」

 そんな言葉が耳に焼き付いている。