暇工作 「労組は民主主義の砦」
ひま・こうさく 個人加盟労組アドバイザー
7月の参議院選挙で、「参政党」が躍進したことは、わが個人加盟労組の組合員にとっても関心が高く、あれこれ感想や意見が飛び交っている。しかし、どれだけ自分自身の問題ととらえているかと言えば、まだ、一般論に留まっているような気がする。五十嵐仁法政大学名誉教授はいう。「与党が支持を失った時に新党ブームが起きるのは初めてのことではありません。1993年の日本新党、立憲民主党も最初はそうでした。今回が今までと違うのは、極右排外主義を唱えるポピュリズム政党、ネオナチともいえる政党だということです」。
極右排外主義とは、他の民族や人種への憎悪をあおることで支持を得ようとする政治勢力だ。ネオナチは、侵略と虐殺を行ったナチスドイツを肯定するなど、民主主義社会にとって大変な脅威だが、今ヨーロッパで影響力を強めている。
その「ヨーロッパの流れが日本にも及んできた背景として、『新自由主義』政策の下で進んだ貧困化と格差の拡大があり、それに対する不満が、外国人、女性、高齢者に向けられているのだ。だから、絶えずバッシングの対象を見つけて差別と分断を社会に持ち込む。
「新自由主義」は、企業活動の自由を高めるとともに、社会保障の削減や、労働者保護規制の緩和、公共サービスの民営化などが特徴だ。経済のグローバル化と相まって、富の一極集中、大多数の貧困化が進み、社会にひずみを生じさせている。だから、それに抵抗する労組は格好のターゲットのはずだ。 しかし、わが労組内では、「民主主義社会にとっても、労組それ自体にとっても大変な脅威」という危機意識が、もう一つだ。賃金問題などの団交課題に追われて目が内向きになっている時期でもあるからだろうか。
しかし、その認識を踏まえた発言をしている労組幹部も多い。(心強いことだ!)たとえば、JAMの安河内賢弘会長は8月28日、「自公の過半数割れを実現したが、目の前に現れたのは、権威主義的で民主主義を根底から覆す衆愚政治だ。民主主義を諦めてはならない」と訴えているし、自治労の石上千博委員長は同25日、公務員について「極端な思想の人たちには辞めてもらわないといけない。これを洗い出すのがスパイ防止法」と党首が発言した参政党を名指しし、「思想信条の自由を侵害する主張に警戒心を持って注視していく」と述べている。
「極右」の台頭を許せば、いずれ労組も排斥の対象になる。労組は民主主義の砦でもあり、象徴でもあるのだ。その自覚と責任感を一部のリーダーだけでなく、労組の隅々までの共通認識としたいものだ。