暇工作 ノルマ未達と罰金、に思う
ひま・こうさく 個人加盟労組アドバイザー
個人加盟労組組合員同士の雑談中に、「自分の親族に、会社から罰金を取られている男性がいる」という話が出た。ノルマが達成できないのが理由で、その金額は1,000円とか2,000円単位で給料から差し引かれるそうだ。
組合員自身のことではないのだが、捨てておけない話題に、みんな俄然盛り上がった。結論から言って、これはあきらかに労働基準法16条に反する。同条は、労働契約の不履行について、使用者が違約金を定める契約を禁止している。これは、契約期間途中で退職した場合に違約金などがあると、労働者はその支払いを恐れて退職できず、意に反して働き続けさせられるおそれがあるので、違約金などの予定の定めを禁止して、労働者の退職の自由を確保するためにある。会社が営業社員などに対し、毎月の契約目標を定めて、これに未達であった場合に罰金を徴収することは、まさに労働契約の不履行をした(=会社が契約目標の達成を労働者に指示したのに、達成できず、労働者が不履行をした)場合の違約金を定めたものにほかならないから、労基法16条違反となるわけだ。労働基準法は強行法規という性質を持ち、仮に労働者が未達に対する罰金を払うことに同意していた場合でも、その同意は無効となって、罰金の徴収は違法となる。
使用者は労働者に賃金の全額を払わなければならないので(労基法24条1項)、同法に違反して罰金を徴収されたり、給料から勝手に控除された場合に、労働者は、使用者から罰金として徴収された分を賃金未払いとして支払うよう求めることができる。
法的には以上のように明確だ。だが、このケースのように、「罰金」という強硬手段で「徴収」される場合なら、わかりやすいが、次のような場合はどうだろう。形は異なるが本質的には似たような要素を含んでいないだろうか。
かつて暇が、営業社員として自動車整備工場代理店を回っていた時代の話だ。営業用社有車を運転中に車両を事故って、会社への報告やらなんやら面倒だからと自己負担覚悟で密かに出入りの整備工場主に修理を依頼し、「ああ、任せてくれ。ちゃんとやっとくよ」と請け負われて、安心していた同僚がいた。修理費は整備工場のサービス、会社には隠蔽。うまくいきそうだったが、あにはからん。その後1,2か月してその整備工場代理店から、別顧客の車両保険事故請求がきた。怪しげな事故だったが、同僚にはその思惑や背景がピンと来たに違いない。が、人的被害が絡んでいなかったせいもあって、結局保険金は支払われ、彼は整備工場に修理代の「借り」を返す形となって無事?一件落着となった。
自分のカネ、会社のカネ、顧客や代理店のカネ、契約者・国民のカネ…。これらをきちんと分けて考えることをせず、立場や、しがらみなどを「利用」して、うまく立ち回って、それを自慢する向きもあるが、決して褒められたものではない。いや、危険ですらある。回りにはいくつもの陥穽が待っている。先の整備工場からの保険金請求の一件も、同僚にとっては、保険金詐欺への加担を問われかねない経緯だった。
罰金の話しから暇が勝手に話題を広げてしまったが、まったくの無駄話でもなかったようだ。