斎藤貴男「レジスタンスのすすめ」


 

       

     辞任の理由は家宅捜索だけか?

 

 


 さいとう・たかお 新聞・雑誌記者を経てフリージャーナリスト。近刊「『マスゴミ』って言うな!」(新日本出版、2023年)、「増補 空疎な小皇帝 『石原慎太郎』という問題」(岩波現代文庫、2023年)。「マスコミ9条の会」呼びかけ人。


  

 これにて一件落着、にされてしまってはたまらない。9月末に経済同友会の新浪剛史代表幹事(66、サントリーホールディングス前会長)が辞任した。本人の申し出を理事会が受理した形だ。

 新浪氏は8月下旬、麻薬取締法違反の容疑で警察の家宅捜索を受けていた。東京都内の自宅では違法薬物が見つからず、簡易の尿検査も陰性だったとされるが、サントリーは翌9月2日、直ちに彼を切っている。

 サントリーには11年前、コンビニ大手のローソンを飛躍させた新浪氏を、三顧の礼をもって迎えた経緯があった。にもかかわらず辞任を促した理由は、家宅捜索だけではなかったはずだ。

 新浪氏には多くのパワハラや女性トラブル、会社資産の私物化等々の疑惑が絶えなかった。「週刊新潮」が一昨年の秋に集中的に詳報していたし、今回もお笑い芸人・松本人志氏のスキャンダルを連想させる所業を暴露された。

 それでも同友会は沈黙を続けていた。新浪氏本人も、「警察の捜査を受けたら絶対に辞めなければいけないのか。そういう前例を作ってはいけない」などと語り、代表幹事のポストに執着した。

 同友会内部ではかなりの対立もあったらしい。そして「週刊新潮」(10月2日号)によると、この間に会員たちは事務局から、「新浪剛史氏の代表幹事の職を継続することへのご意見募集」というメールを受け取った。「継続」を前提とする〃踏み絵〃のようなアンケートに、会員たちは戸惑ったというが、同友会にはそれだけ同類が少なくないということなのだろうか。

 ともあれ財界3団体の一角は、一応の見識を示してはみせた。労働規制緩和の強烈な推進論者でもある。新浪氏にはしかし、なんと政府の経済財政諮問会議の民間議員の座が残されている。このような人物にあれこれ指図される義理はない。

 辞めていただこう。