ルールの他に守るべきマナーがある?


           玉木 正之        


 たまき・まさゆき スポーツ文化評論家,日本福祉大学客員教授。著書に『スポーツとは何か』(講談社現代新書)など多数。近刊は「真夏の甲子園はいらない 問題だらけの高校野球」(編・著、岩波ブックレット、2023年)


 2月下旬、韓国で行われた世界卓球選手権では、日本チームが王者中国に2対3と迫る大健闘。だが、もう一つ別に興味深い「事件」があった。

 それはグループリーグで日本の木原美悠と平野美宇の両選手が南アフリカの選手を、1ゲーム11対0の完封勝ちしたことに対して、ネットや中国メディアが「マナー違反」と批判したことだった。

 確かに卓球では、相手を圧倒して無失点勝利することを「マナー違反」と言うこともあった。が、それは1ゲーム21点先取で勝利だった時代の話。01年以降1ゲーム11点先取となって以来は、大きく点差を離しても油断できない。だから卓球の「マナー違反」は過去の遺物と言えそうだ。

 が、様々なスポーツに、ルール違反ではないが「マナー違反」とされる行為が多数存在しているのも事実だ。

 たとえばサッカーで身体を痛めて倒れた選手が出ると、ボールをタッチラインの外に出して試合を止め、選手の治療を優先する。そして試合の再開はボールをスローインする選手が、ボールを外に出した相手チームにボールを返すのが「礼儀(マナー)」とされている。

 バスケットボールでは、試合終了間近に点差をリードしたチームの選手が、ダンク・シュートなどの派手なプレイを見せたりするのは、「マナー違反」とされている。野球では大量リードのチームがバントや盗塁の細かい作戦を行うと「マナー違反」とされ、打者の頭部近くへの投手の投球は「マナー違反」以上の「ルール違反退場」となる。

 が、バレーボールでスパイクを決めたときには大喜びするな! ラグビーでもトライした選手は派手に喜ぶな! といった「過去にあったマナー」は消え去ったようだ。

 マナーは時代とともに変わるものなんですね。