守屋 真実 「みんなで歌おうよ」

                     


 もりや・まみ ドイツ在住27年。ドイツ語教師、障がい児指導員、広島被ばく2世。父は元千代田火災勤務の守屋和郎氏 

                   


 とうとう辺野古新基地建設代執行が始まってしまった。それも権力を見せつけるかのように、予定より一日早く土砂投入が再開された。ああ、悔しい!

 12日には首相官邸前で午前、午後、夕方と抗議行動が行われた。昼には250人が集まり、スピーチあり、歌ありでにぎやかではあったけれど、地方の自治権を奪い、民主主義を破壊する暴挙に対して250人は少なすぎる。平日で寒い時期とは言え、ゼロが二つ足りないじゃないかと思う。子ども連れで参加した沖縄出身の若いお母さんが、「やっぱり本土の人にとってはこの程度の問題なのか」と言ったのに胸が痛んだ。

 こんなことを許したら地方自治体が何を決めても、住民が何を望んでも、政府の意向ですべて決められてしまう。日本中どこにでも基地や弾薬庫や原発や放射性廃棄物貯蔵庫が作られてしまう。なんでみんなもっと怒らないんだ!なんでもっと危機感を持たないんだ! 

 とりわけ腹が立つのは、デニー知事が裁判所の決定に従わない無法者であるかのようなツイートをする輩だ。そもそも私人しか行使できないはずの行政審査権を濫用して起こした裁判そのものが違法なのに、そのことをメディアもほとんど報道していない。よく知りもしないで他人を誹謗中傷するな!

 スタンディングをしている時にも、ケンカ腰で絡んでくる人もいるし、罵声を浴びせて通りがかる人もいる。もう慣れてしまったから、いちいち腹を立てたりはしないけれど、不愉快であることに変わりはない。でも、不愉快である以上に、いったいこの国はどうなってしまうのかが心配だ。インターネットやSNSでなんでも簡単に調べられる時代、マニュアルやトリセツが模範解答を示してくれる時代は確かに便利かもしれないけれど、その分自分で考えることが少ない。わからないこと、知らないことの不安を抱えて生きるよりも、それらしく聞こえる誰かの意見を無批判に取り入れることで納得してしまう。知ったかぶりで違う意見を攻撃する。手軽で素早く物事を処理できる機械、常に目新しいものを所有しなければならない社会の同調圧力。立ち止まって考える時間を奪う非人間的な労働。結局のところ、資本主義というのは人間を劣化させるシステムなのだと思う。世界中で右翼ポピュリストが台頭しているのはそのせいだ。人類は本当に破滅に向かっているのかもしれないと時々思う。

 だからといって悲嘆に暮れているわけにはいかない。能登半島地震で、市民の命と暮らしを守るのは軍備ではないことがまたしても明らかになった。地震と津波で被災した能登地方の人々が窮乏しているのに、自衛隊の大規模訓練をやる政府。市民が物価高に苦しんでいるのに、自分たちだけ裏金をため込む自民党議員。これだけの自然災害を経験してもまだ原発を維持したがる原子力ムラ。闘う相手には事欠かない。

 

 

 今、本土に住む私たちが沖縄よりはマシな生活を営めているのは、平和を求める沖縄の人々が軍拡を止める防波堤となって闘い続けてくれているからだ。沖縄を再び捨て石にしてはならない。沖縄に連帯しよう!デニー知事を応援しよう!代執行を止めよう!