憲法記念日に考える

    改憲論議の裏で進む「壊憲」

 

        中野晃一上智大学教授に聞く

 

 


 なかの・こういち  市民連合(安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合)呼びかけ人 上智大学教授


  国会では性急な改憲論議が行われようとしています。他方、その裏で着々と進められているのが、  日本国憲法を事実上なきものにするかのような「戦争する国づくり」です。中野晃一上智大学教授(政治学)は、憲法を壊す「壊憲」をやめさせ、戦争回避に力を尽くす政府が必要と強調します。

 

 ●米軍主導で参戦決まる

 

 第2次安倍政権の発足以降、「憲法改正」をめぐるせめぎ合いが続いています。平和を願う人々の努力によって明文改憲はおしとどめられていますが、その一方で、憲法をないがしろにし、なきものにするかのような既成事実が着々とつくられています。相手国への先制攻撃と紙一重の「反撃能力(敵基地攻撃能力)」の保有をはじめ、防衛費の国内総生産(GDP)比2%への倍増、武器の共同開発と第三国への輸出解禁など、戦後日本が国是としてきた「専守防衛」を逸脱する政策が、十分な国会審議もなく決められてきました。

 4月10日に行われた日米首脳会談の共同声明はさらに、自衛隊と米軍の「指揮統制」の連携強化を打ち出しました。対中国を念頭に、日米の指揮系統を一体化するとともに、中距離ミサイルの配備など日本の攻撃力強化へ本格的にかじを切ることを約束したのです。

 中野教授は「集団的自衛権の行使を容認した、2015年の安保法制成立以降、日本が攻撃されていなくても米国の戦争に巻き込まれる可能性が生じました。この枠組みでは日本政府が『存立危機事態』と判断して参戦することになりますが、今回の共同宣言ではさらに、日本政府や国会が判断する前に、米軍主導で戦争が始められることになります」と指摘します。

 こうした懸念に対し政府は「米軍の指揮統制下に入ることはない」と弁明しますが、「軍隊組織が指揮統制の連携を強化するというとき、指揮系統を統合しなければ意味がありません。圧倒的情報量を持つ米国に『ミサイルを撃て』と言われれば、自衛隊は日米同盟の破たんを恐れ、拒否できないでしょう。軍の現場で戦争が始まるのです」(同教授)。

 

 ●米国は戦わず、日本が戦場に

 

 ではそれで日本が安全になるのかというと、逆の事態が生じてしまう、と同教授は警告します。

 「今最も考えられるシナリオが『台湾有事』です。仮にもし武力衝突が生じた場合、米中が直接戦争をすることはありません。核戦争を避けるためです。そのことは、今のウクライナの事態をみれば明瞭です。では誰に戦争をさせるかといえば、日本の自衛隊です。米軍の下請けをさせられるとともに、日本が戦場となり、他国によるミサイル攻撃の標的となるでしょう。そのことの恐ろしさを政府やメディアはどれだけ伝えているでしょうか」

 自民党の麻生太郎副総裁などは「台湾有事は日本の有事」と、戦争をあおるような発言をしています。中野教授は「過去の植民地支配を忘れて、そのようなことを言えば緊張が高まるのは当然です。それは台湾にとってもよくないこと。台湾が大事だと思うのなら、なおのこと戦争回避の努力をしなければならない。米国との軍事同盟を強化すれば守ってくれるとか、中国が黙って引っ込むとか、そのような言説は根拠のない思い込みに過ぎません。それこそ〃平和ボケ〃というべきです」と批判します。

 「改憲」を打ち出すその裏で政府与党が進める「戦争する国づくり」。再び戦争による惨禍(さんか)を生まないと誓った憲法を無力化するという点で、「壊憲」と呼ぶべきでしょう。

 特に大切なのは、近く行われるともいわれる解散総選挙です。日本を焦土にしかねない政治勢力に厳しい審判を下すこと、専守防衛を堅持し、東アジアでの戦争回避に力を尽くす政府をつくることが、今何よりも求められています。