野球ファンは大谷選手のMVPをよろこぶより、日本のプロ野球界の大改革を訴えろ!


           玉木 正之        


 たまき・まさゆき スポーツ文化評論家,日本福祉大学客員教授。著書に『スポーツとは何か』(講談社現代新書)など多数。近刊は「真夏の甲子園はいらない 問題だらけの高校野球」(編・著、岩波ブックレット、2023年)


 大谷翔平選手がメジャーリーグ(MLB)史上初となる2度目の満票で、アメリカン・リーグMVPに輝いた。見事と言うほかないが、一方で喜んでいられないこともある。

 日本のプロ野球(NPB)はアメリカに優秀な選手を奪われるばかりで、これではまるでMLBの二軍リーグだ。

 野茂英雄投手がアメリカに渡った1995年頃のMLBの市場規模は約1500億円で、日本もほぼ同額だった。しかもMLBは、選手組合の長期ストライキなどで、存続が危ぶまれるほどの危機だった。が、そこからMLBは新たに球団を増やし、リーグ全体で多角経営に乗り出し、FA制度の改正などで選手の年俸を引き上げ……そして市場規模を約1兆円にまで拡大した。

 一方、NPBの市場規模は約2千億円と、ほぼ横ばいのまま。選手の平均年俸は、MLBが4億5千万円に対して、NPBは約4千3百万円で、10倍もの大きな差をつけられた。

 NPBの市場規模の頭打ち状態は、まるで昨今の日本経済の低迷ぶりのようで、円安状態が続くならますますMLBでドルを稼ごうという選手が出てくるに違いない。

 NPBは、来年度から二軍の2チーム増加を決定した。が、その2チーム(ハヤテ223と新潟アルビレックス)には「一軍にチームを持たないこと」を参加条件にした。一軍は既存の12球団で利益を分け合いたいのだろうが、これではNPBの発展する未来像を描けず、野球ファンはMLBでの日本人選手の活躍に注目するほかないのか……?