米メジャーリーグのチームは公共の財産で、球場は税金の援助。


           玉木 正之        


 たまき・まさゆき スポーツ文化評論家,日本福祉大学客員教授。著書に『スポーツとは何か』(講談社現代新書)など多数。近刊は「真夏の甲子園はいらない 問題だらけの高校野球」(編・著、岩波ブックレット、2023年)


 エンジェルスの大谷翔平の活躍が止まらない。日本人選手初のホームラン王どころか三冠王も? さらには投手としてもエース級の活躍となると、日本のマスメディア(特にテレビ)が大騒ぎするのも無理はない。しかし、さらに報道してほしいのはアメリカのメジャーリーグ(MLB)と日本のプロ野球の大きな構造的相違点だ。

 たとえばヤンキースの本拠地ヤンキー・スタジアムは、2009年に新球場がオープンしたが、建設費約15億ドルの約半分の7億ドルがニューヨーク州・市の税金による援助なのだ。同じくニューヨーク・メッツも、同じ年に新球場シティ・フィールドをヤンキースより安価な約6億5千万ドルで建設したが、その約半額がやはりニューヨーク州と市の税金で賄われた。

 また、1998年に誕生した新球団アリゾナ・ダイヤモンドバックスが新球場を建設した時は、本拠地フェニックス市が消費税を2%上げ、当時の建設費3億5千万ドルの約7割にあたる2億4千万ドルを9カ月間で集めて、それを新球場建設の援助として球団に寄付したという。

 このようにMLBの本拠地球場は、すべてが公的援助を受けて建設されているのだ。

 日本のプロ野球では、日本ハムファイターズの本拠地として今年オープンした新球場エスコンフィールドが、北広島市から固定資産税免除などの優遇措置を受けたり、球場の指定管理者となって球場を借りずに経営する球団も現れたりしている。

 が、MLBの公的援助と較べると雲泥の差。もちろんジャイアンツが新球場を……と言っても、東京都が民間(新聞社)の経営している球団に税金の援助は行えない。

 MLBのように、日本の野球が「公共の財産」と認められる日は来るのだろうか?