雨宮処凛の「世直し随想」

 

 

     困窮者が増える一方で


 あまみや かりん 作家・活動家。フリーターなどを経て2000年,自伝的エッセイ『生き地獄天国』(太田出版/ちくま文庫)でデビュー。『生きさせろ! 難民化する若者たち』(07年,太田出版/ちくま文庫)で日本ジャーナリスト会議賞受賞。


 新型コロナが「5類」に移行してから約1カ月後の6月はじめの土曜日、東京都庁の下を訪れた。毎週土曜日に開催されている支援団体「もやい」と「新宿ごはんプラス」による食品配布の取材に行ったのだ。

 コロナが収束ムードとなる中、ここに来て、炊き出しや食品配布に並ぶ人が過去最多となっていることは前回でも触れた通りだ。4月1日には723人。そして5月27日には749人と過去最多を更新した。コロナ前はせいぜい50~60人が並んでいた場に、今や若い女性や子連れの父親、ウーバーイーツの四角いリュックを背負った若者、スーツ姿の人などが並ぶ。何しろ実質賃金は13カ月連続で下がり続け、消費者物価は19カ月連続で高騰している。

 5類移行を前に開催された電話相談にも、全国から悲痛な声が寄せられた。「コロナで失業し、2年前から車上生活」「年金生活だが、貯金が尽きたら首をくくるしかない」「コロナで生活が苦しく、借りた国の特例貸付の返済も始まって、生活できない」など。

 そんな人々を支えてきた支援団体にも転機が訪れている。コロナ収束ムードが高まる中、これまで寄せられていた寄付金が減っているのだ。おそらく、5類移行から時間がたつほど「もう収束したのに、それでも困窮しているなんて自己責任」というムードになっていくだろう。

 しかし、一度痛めつけられた生活は一朝一夕に立て直せるものではない。「このままでは活動を続けられない」という声があちこちから聞こえてくる。今、困窮者支援は大きな曲がり角を迎えている。