松久 染緒「随感録」


まつひさ・そめお 元損保社員、乱読・雑学渉猟の読書人で、歌舞伎ファン。亥年生まれ。        


 

ネガをポジに

 

5月号の加藤禎助さんの「憂うほどでもない日本」を拝読。「本紙の主張は概ねネガティブ過ぎる」と。いわく、テント生活者はもはやいない、街並みがきれい、停電断水もない、電車は定刻に来る、水は安心でおいしい、結構な現状ではないか。ただし、手放しで楽観視してはいない。すなわち貧困は大問題、そのほかエネルギー、食糧自給、働き手不足も問題だと。なるほどおっしゃる通りではある。

しかし、なにごとも表もあれば裏もある。逆の意味で「人のゆく裏に道あり花の山」。

すでに旧聞になったが、公文書改竄を指揮しても処分されないどころか局長から長官に昇進させる人事の破廉恥さ、日本学術会議6名の任命拒否の沈黙、旧統一教会の影響力を政治から排除する意思は本当にあるのか、規制監督当局も最高経営責任者のだれも責任を取らなかった原発事故、12年たっても手も付けられないものをさらに60年まで延命させるというのはどういう神経か、北朝鮮のミサイルがどこに飛んだかもわからないのに、避難訓練も避難場所がなくても鳴るJアラート、中国の軍事的脅威も説明なくわからないまま日米軍事同盟を強化し、言いなりに高価なトマホークを購入、財源もないのに、それも破綻した歴史に対する反省もなく軍事費を国債で調達、26人が犠牲となった遊覧船事故の責任も問われていない、南西諸島で将官搭乗のヘリコプターが墜落した責任は、汚職まみれの東京オリンピックの検証と責任はどうなっているのか、元首相が暗殺された後も現首相への暴力的襲撃が警備・防御できていない現状、発行済国債の50%以上526兆円の国債を保有し、それが8749億円の含み損を抱え、予算を組めないからインフレになっても日銀は金利を上げることができない、株式市場暴落の恐れがあるから保有する51兆円もの株式投信を売ることもできない。ことほどさように現状は、損保のなかま紙の論調がそうなのではなく、世の中自体がネガティブ過ぎる課題だらけなのです。

「政権交代なき民主主義」なる「監査なき株式会社」を有権者が延命させてきた結果が、このていたらくをもたらしたのだ。(毎日新聞時代の風 藻谷浩介) 

 

ではどうするか。「世襲の神輿をペーパーテストで選抜した官僚が担ぐ」(同)今の政府が、ビビッてやむを得ず選択せざるを得なくなるような政権交代の芽を積極(ポジティブ)的に選挙で育てるしかないか。