雨宮処凛の「世直し随想」

 

 

     生活保護減額は違法


 「生活保護費を引き下げられ、冬季加算も引き下げられ、灯油の値段は上がっています。亡くなった両親の仏壇にあげるお水が凍ってしまうほどの寒さです」「お金がないから冠婚葬祭にも出席できない。親類たちと交流できなくなって、今は疎遠になっています」

 青森から来た男性は、悲痛な声でこう訴えた。3月30日、衆議院議員会館。この日、生活保護費の引き下げを違憲とする訴訟の原告団・弁護団が厚生労働省の職員に要請書を手渡したのだ。

 第2次安倍政権発足と同時に始まった生活保護費引き下げは違憲として、全国29都道府県で裁判が始まったのが8年ほど前。

 これまで14の地裁で判決が出ており、大阪、熊本、東京、横浜、宮崎の各地裁で原告が勝訴を勝ち取っていたのだが、3月24日に青森地裁と和歌山地裁で勝訴を勝ち取り、同29日にはさいたま地裁でも勝訴。17地裁中8地裁で勝訴し、昨年10月から実に5連勝となった。

 この状況を受けて、青森、和歌山、さいたまの原告と弁護団がこの日、厚労省に「各地の被告自治体に控訴しないよう指導」することなどを求めたのである。

 保護費引き下げが始まってもう10年。この3年はコロナ禍で、昨年からは猛烈な物価高騰が続いている。原告らからは「もう削るものがない」という悲鳴が上がっている。

 長引く裁判でさいたまでは原告が9人も死亡した。

 「判決を受け止めて、早く決着してほしい」

 当事者の声に厚労省はどう答えるのか。見守っていきたい。