斎藤貴男「レジスタンスのすすめ」


 

 

      ノルドストリーム爆破の意味

 昨年9月に発生した、ロシアからバルト海経由でドイツに天然ガスを送るパイプライン「ノルドストリーム」の爆破事件は、米国の秘密作戦だった――。国際ジャーナリストのシーモア・ハーシュ氏が、自身のブログで報じた。

 それによれば、作戦はバイデン大統領の指示で遂行されたという。6月に北大西洋条約機構(NATO)の演習に隠れて、米海軍ダイバーが爆薬を設置。3カ月後にノルウェー海軍機がソノブイ(音波で潜水艦を探索する機械)を投下して起爆させた由。

 米政府は直ちに否定した。ただし、ハーシュ氏には最高峰と言ってよい実績がある。

 ベトナム戦争のソンミ村虐殺事件や、イラク戦争における米軍アブグレイブ刑務所捕虜虐待事件など、世界史に残る重要報道を重ねてきた。戦争に謀略は付き物でもあり、彼のスクープが誤報である可能性は高くないと思われる。

 とすれば、ウクライナ戦争に対する米国の本気度がわかろうというものだ。折しもノルドストリームの増強が進められていた時期だった。

 作戦の目的はドイツなどNATO諸国のロシアへのエネルギー依存を弱め、対プーチンの結束を強めることだったという。果たして最近のウクライナ戦争は、従来にも増して米ロの代理戦争としての側面を肥大化させつつある。

 岸田文雄首相は記者会見で「今日のウクライナは明日の東アジアかも」と語ったが、この認識は正しい。もっとも、それは彼が急ぐ「だから軍拡と米軍との一体化」を正当化するものではまったくない。このままだと日本が米中代理戦争の戦場兼駒にされてしまう、ということだ。

 ハーシュ氏のスクープを、日本の主要メディアは伝えようとしていない。すぐには裏が取れなくても、彼がこうした報道をしたという事実だけでも十分なニュースバリューがあるのに、だ。この現実の意味を考えてみよう。