守屋 真実 「みんなで歌おうよ」

                     


 もりや・まみ ドイツ在住27年。ドイツ語教師、障がい児指導員、広島被ばく2世。父は元千代田火災勤務の守屋和郎氏 

                   


 なかまがいると

  

 毎年のことながら、三月は忙しい。通常の活動に加えて、3.11関係の集会があるからだ。

 これを書いている今日、3月20日月曜日は、本当は今月唯一仕事も活動もない日のはずだった。前日には総がかり行動の19日集会があり、翌日は「さよなら原発全国集会」があるから今日は一日家にいようと思っていたのに、やっぱり官邸前に立った。

 私たちのアダンの会は、毎週月曜と金曜に官邸前で辺野古埋め立てに抗議している。金曜日は歌の好きな仲間が集まって10人を超える日もあるが、月曜日は2~3人で音楽なしのスタンディングをしている。今日はいろいろな事情で常連が参加できずEさん独りになってしまうので、急遽私も行くことにした。Eさんは「無理に来なくていいよ」と言ってくれたけれど、仲間がたった一人で行動していると知っていたら、家にいても気持ちが落ち着かないに決まっている。我ながら馬鹿だなと思うけれど、行かなかったら罪悪感を感じてしまったと思う。

 

 Eさんは不思議な人だ。御年は喜寿前後、小柄な体でほとんど何も食べず、たばことコーヒーで生きているようなのに、文字通り毎日市民運動に出かけている。オスプレイ配備に反対して横田基地に、関東大震災の朝鮮人虐殺に抗議して亀有に、辺野古埋め立てに抗議して大成建設に、D東京電力と日本原電に、DHCに、防衛相に、文科省に、経産省に…とどこにでも行く。みんなEさんが義理堅くて、誘えば必ず参加してくれると知っているから、あっちからもこっちからもお声がかかるのだ。

 かと言って、強面の理論家でもなく、バリバリの闘士といったタイプでもなく、いつも飄々としている。今日私が現地に着いた時には、三人の警察官と向かい合っていたから「何かあったのか!?」と思ったけれど、「天気がいいから花粉がひどいね」などと話していた。誰とでも世間話ができる昔風のおばさんだ。シングルで障がいのある娘さんを育てた母親でもある。市民運動をしていると、つくづくいろんな人生があるなと思わされる。

 

 話が飛ぶけれど、ドイツにいた時ミッテンヴァルダー・ホ―ヘンヴェークという2000m級の岩山の縦走をしたことがある。部分的には足の下300mは空気だけという個所もある。最初は現地で山岳ガイドをしている友人に同行してもらって楽しんだのだが、翌年同じルートを単独行したときにはすごく怖かった。大丈夫、落ち着けと何度も自分を叱咤して何とかやり通した。一度目の時もザイルで繋がっていたわけではないから、落ちたら終わりなのは同じだったのに。人間は仲間がいると強くなれるものなのだなとこの時思った。