雨宮処凛の「世直し随想」

 

 

     生活保護への偏見


 この3年間、コロナ禍での困窮者支援でもっとも苦労したこと。それは「生活保護だけは嫌」という人への説得だ。

 最近も、ある相談会で残金数百円という方の相談を受けた。コロナ禍で失業。家賃やライフラインの滞納も始まり、携帯も月末には止まるというのに「絶対に生活保護なんか受けたくない」と繰り返す。結局、配布される食料だけもらって帰ってしまった。そんな場面に遭遇するたびに、無力感にさいなまれる。

 偏見の強さを証明するように、コロナ禍で生活保護を利用する人は増えていない。逆にコロナ前の19年と比較して数万人単位で減っているのが現状だ。

 そうした偏見を払拭したく、この1月、『学校では教えてくれない生活保護』(河出書房新社)を出版した。タイトル通り、私たちは「最後のセーフティネット」について義務教育で教わっていない。だからこそ世間には誤解がはびこる。が、よく言われる「不正受給」は2%程度。「働けるのに怠けている」というのもよく聞く言葉だが、利用者の8割以上を「高齢者世帯」「障害傷病世帯」が占める。

 こうした現実と同時に外国の制度も紹介した。「家賃だけ」「医療費だけ」「教育費だけ」など、バラで利用できるように制度を変え、名前も「国民基礎生活保障」とした韓国。それによって利用者も増えた。またドイツでは、基本的に家族に連絡がいく「扶養照会」は、なし。かなりの貯金があっても利用できる。

 「すぐに使える」情報を盛り込んだ一冊。ぜひ、手にとってほしい。