暇工作「生涯一課長の一分」

 

               労働組合の影が薄い!


 過去30年、世界の主要国に比べ日本の労働者の賃金があがっていない。そんな日本を嫌って続々と海外を目指す人々が増えている。

 ある学者はこの事態を「静かなストライキ」と評する。ストライキといえば労働組合、と続きそうなものだが、そうならないところにこの国の深刻な現状が見て取れる。賃金が上がらない原因が語られても、労働組合の文脈で論じられることがない。もはや労働組合は日本社会から消え去ろうとしているのか?

 賃金は政府に決めてもらうものなのか?もともと労働組合と経営者の団体交渉で決まっていくものではないのか?現在、団体交渉の結果が適用されているのは日本全国の全従業員中、わずか16.8%の人だという。労働組合の影の薄さの第一要因は、労働組合の数が少ないこと(組織率は17%ほど)だが、それ以上に憂うべき要因は、闘わない労働組合、すなわち「名ばかり労組」が増えていることだ。

「労働組合は『や党』に徹するべきだ。『ゆ党』や『よ党』になっちゃお終いだよ。損保の(多数派企業)労働組合はみな『よ党』じゃないか」と喝破するのは、ある損保代理店主だ。

 損保の労働組合の専従役員を務めていたS氏が、無事「満期満了」になり、職場に戻ることになった。その「記念パーティ」に暇も招待された。そこでの彼の振る舞いに仰天した。彼は後輩の労組幹部たちを集め(酔った勢いもあって)、こう念押ししていたのだ。

「おい、みんな忘れないでくれよ。俺を出世させてくれよ。お前たちの任務だからな」

 聞いている暇の方が恥ずかしくなってしまった。あんたみたいな幹部がいるから、こちらまでとばっちりを受けるんだよ。

 企業内少数派労組のメンバーである暇に対してすら、「暇さんは組合幹部ですか?いいですねえ。出世が約束されていて」と言う人が多かった。自分だけは違う、と心で叫んでみても、説得力をもって世間に定着した印象を払拭することは難しい。

 

 

 しかし、暇は、闘う労働組合の存在をよく知っている。個人加盟労働組合に助けを求めてきた労働者を、身銭を切って支援し、骨身惜しまずたたかうリスペクトすべき数多くの良心的幹部の存在も知っている。日本には本当の労働組合もあるのだ。その姿を国民の中にもっともっと浸透させたいと思っている。これからも、そんなたたかう労働組合や個人の姿を発信し続けたいものだ。