暇工作「生涯一課長の一分」

 

         早期退職推奨制度応募のA子さんに聞いた


 三井住友の「キャリア・チャレンジ制度」(転職推奨制度)は、今回のMS&ADによる6,300人の人員削減ピースの一つ。この制度に応募して55歳で退職したA子さんに、その動機や心境などを聞いた。

 

 

 「60歳まで勤めるのと、生涯賃金が1,000万円は違うんですけどね。もう、いろいろ考えて、やってられないって感じで…。決定的だったのは、年度年齢、55歳以降給与が下がるという賃金体系です。3割くらいダウンですよ。なんで年齢が上がるだけで自動的に賃金が下がるんですか?仕事内容は変わらないんですよ。こんな理不尽な制度が改善されることを、ちょっぴり期待していたし、モノも言ってきたつもりですけど、それもダメとわかって…それが一番の動機ですね。それと自由になる時間との天秤です。55歳以降給与の賃金体系もそうですが、パートさん達の給与から上がらないとダメなんだろうと思います」

 「昇進、昇給だって、営業社員はアップするけど、スタッフは上げない。営業は稼いでるから、優先されている!?なんて思ったりして…、比較的給与の高い、中高年には、やたらと多くの仕事を言いつける…それでいてやれスピード感がないと人事評価は低くする。朝8時半から夜7時まで働く生活が1年続いて、職場の環境が変わったのもあって、私でもウツになりかかったんですよ。信じられないでしょ」

 「何もかも会社のためっていう空気に違和感を感じながら勤めるのって、おかしいんじゃないかって。生き方は一つだけじゃない。みんな会社辞めたら大手損保に勤めているっていうブランドがなくなるのが怖いって考えているみたいだけど、外の世界がわかっていないんじゃないかな。いや、知ろうとしないんじゃないかな。人事考課によっては60歳以降も週5日勤務のシニア社員制度があるけど、『60歳なのになんで週5日も働けてるの?』って羨ましがっているパートさんがいたとか聞いて、そんなに大手損保勤務の社員という肩書に魅力を感じているのかと、改めてびっくり」

 「あれこれ、悩みながら、結局、自分は会社に縛られない生き方をしたいのだと、はっきり悟ったのです。もっと家族も大切にしたいし…え、家族ですか?猫ですけどね。かわいい猫と一緒の時間も大切にしたい。エレクトロフォーミングという銅メッキの方法でアクセサリーを作りたいし。お花の師匠の資格もあるので、地域のワークショップなども通じて、その技能も生かしてみたい。わたしの行動の基本は好奇心。サラリーマンとは、違う生き方をするので、頭を切り替えていかないと」

 「最初に戻って、キャリア・チャレンジ制度への応募についてですが、これってもちろん、退職金の上乗せはあるんですが、以前は応募条件が結構厳しくて。ええ、例えば転職先として同業系はだめだとか、いろいろ制限があったのです。それが、今回、緩和されたのです。表向きは変わらないけど工夫次第でクリアーできるようになった。応募者を増やし、それで人員削減の数を稼いで手柄を立てたいという経営者の都合でしょう。そこに乗っかるのも、ある意味、悔しいけれど、自分の人生を現実的に考えれば、チャンスでもあると割り切りました。55歳。まだまだこれからの人生ですから、先の保障はありませんがやってみるしかないですね」