雨宮処凛の「世直し随想」

 

 

    胸震えた連帯の言葉


 あまみや かりん 作家・活動家。フリーターなどを経て2000年,自伝的エッセイ『生き地獄天国』(太田出版/ちくま文庫)でデビュー。『生きさせろ! 難民化する若者たち』(07年,太田出版/ちくま文庫)で日本ジャーナリスト会議賞受賞。


 8月31日、東京・池袋の大手百貨店「そごう・西武」の労働組合がストライキをした。

 日本の百貨店でストライキが行われるのは、実に61年ぶりのことだという。

 その夜のテレビニュースには、組合員のデモの様子が映し出された。デモにはライバル店である伊勢丹や高島屋の組合員も参加していた。高島屋の男性は、なぜ参加したのかというインタビューに応えて言った。

 「ライバルだけど、仲間が困っていたら助ける」

 その言葉を聞いて、思わず泣きそうになった。そんなまっすぐな言葉を、映画とかアニメ以外で久々に聞いた気がしたからだ。

 同業者で競争相手だけども、同じ業界で働く仲間だから、助ける。何かあったら駆けつける。そんな真っ当な言葉を、「大人」の口から耳にしたのは本当にいつぶりだろう。

 思えば小さな頃から、隣の誰かは助け合う対象ではなく、蹴落とし、出し抜く対象であるということばかり吹き込まれてきた。競争は教えられてきたけれど、連帯の仕方を学んだことは一度もなかった。それがこの国の多数派の感覚ではないだろうか。

 しかし、ストライキは大きなニュースとなり、連帯の光景を多くの人が目撃した。

 思えば今年は、7月から米ハリウッドの俳優組合のストライキも始まった。俳優と脚本家のストが同時に行われるのは、実に63年ぶりだという。

 分断と競争と自己責任の時代から、連帯の時代にフェーズが変わりつつあるなら、こんなに頼もしいことはない。