札幌2030冬季五輪をあきらめウクライナ開催を主張してみては?


           玉木 正之        


 たまき・まさゆき スポーツ文化評論家,日本福祉大学客員教授。著書に『スポーツとは何か』(講談社現代新書)など多数。近刊は「真夏の甲子園はいらない 問題だらけの高校野球」(編・著、岩波ブックレット、2023年)


 2030年冬季五輪招致運動を展開していた札幌市は、どうやら落選する気配が濃厚になってきた。

 当初は地元住民の五輪開催反対の声が高いドイツやスイスの諸都市、開催希望を34年に延期した米ソルトレイクシティなどより、国際オリンピック委員会(IOC)も札幌開催を望んでいた。

 が、東京五輪汚職事件が尾を引いて、日本の五輪招致の気運も盛り上がりを欠き、開催地の決定を何度も先送り。そして、来年パリ五輪の時に開かれるIOC総会で決定されることになったのだが、そこへスウェーデンのストックホルムが名乗りを上げ、札幌の五輪開催は風前のともしびとなった。

 だから札幌は開催候補都市を辞退したほうがいいと思っていたら、五輪アナリストの春日良一さんが、さらに良いアイデアを主張。それは札幌市が五輪開催を辞退するのと引き替えに、ウクライナ開催を主張するというものだ。

 戦争真っ最中のウクライナで、五輪開催が可能か? といぶかる人もいるだろうが、古代ギリシャのオリンポスの祭典以来、戦争をやめることこそオリンピックの最大の意義だったはず。ウクライナは21年2月に、28年のユース五輪と30年冬季五輪の招致開催を表明したこともある。

 確かに戦争中のウクライナに五輪開催は困難だろうが、現在のIOCには冬季五輪を開催できるくらいの金銭的余力がある、と春日氏は言う。

 ならば30年五輪開催で五輪停戦を実現し、ロシアやベラルーシの選手も招いてスポーツを行うなかで和平を探るのも、有効な方法かもしれない。

 IOCにとっても商業主義でなく、本来の平和運動を推進でき、札幌市がそれを主張すれば日本も東京五輪汚職の汚名返上につながるかも?

 皆さんは、どう思いますか?