「働く」はみんなのもの

 

    シフト労働の闇(6)

     

    ジャーナリスト 竹信 三恵子


    「逆切れ報復ツール」規制目指して始まる工夫

 

 コロナ禍での労働相談に当たっている女性たちと話していたら、こんな声が出てきた。「シフト労働って、雇用契約があるのに雇用提供はなくてもいいわけでしょ。そんなのあり?」

 ここでは、契約書の不備も問題になった。週3日と書いてあったのでコロナ禍の業務減らしに抗議したら「景気変動の場合はこの限りではない」とも書いてあり、役に立たなかった例が出てきたからだ。

 標準契約書をつくって、最低限の条件を備えた雇用契約を義務づけることくらいはしてもいいよね、と場は盛り上がった。

 「労働法律旬報」(2021年11月下旬号)で紹介された欧州のシフト労働規制はそんな現場の実感に沿っている。

 今年8月に実質施行の「EUの透明で予見可能な労働条件指令」に盛り込まれるもので、契約があっても雇用がない、といったシフト労働の問題点に雇用通知義務を通じ、間接的に歯止めをかけようとするものだからだ。

 たとえば、労働時間の見通しが立たない働き方の場合には、最低保証賃金を支払う時間数や、最低保証時間を越えてなされた労働の報酬などを通知する。

 通知義務を通じ、雇う側は「有給の労働時間数」を明確にせざるをえなくなる。最低賃金や最低労働時間数を決める従来の方法でなく、融通むげに見える働かせ方に条件の明示義務を設け、雇う側を規制するアプローチと言える。

 仕事も賃金もないのに身柄だけは拘束されるような雇用契約が横行すれば、雇用統計が有名無実になるばかりか、雇う側が対価なしで人を言いなりにできる奴隷労働の復活につながりかねない。

 そんな異様な世界を阻むためのシフト労働規制目指し、工夫が始まっている。